小原眞紀子さんの連載純文学小説『神違え』(第03回)をアップしましたぁ。人間が集まれば軋轢が生じるのは半ば必然です。子供のいじめ問題については、大人のほぼすべてが「撲滅せよ!」と声を上げられますが、自分たち大人の世界になるとちょっと歯切れが悪くなる。「そう社員の権利ばかり主張されても・・・」「だけど上司と部下なんだから・・・」と留保ポイントが増えてゆきます。大人になれば世の中力関係、といふのは言い過ぎかもしれませんが、一面の真理ではあります。まず現実を見据えないと、それを円滑に動かす上位観念(理想思想)は実効性を持たないです。
「それで、わたしは、」と言いかけて、来林の長は言い直した。「我々は、どのようにしたらよろしいでしょう」
外だな、と鈴丸守は言った。
「山城の外部での、番台の不品行を探すこった。その調子だと、番台は結構、この山城に味方を作ってる。番台にこのまま居座ってほしい、と思ってる連中は、この山城の内部で起きている出来事のいちいちに対して、あんたと正反対の評価を下すだろう。そいつらの力が強まれば、あんたが下ろされるだけだ」
来林の長を作った鈴丸守にとっても、またわたしにとっても、それは名折れだった。
「外部での、不品行だったら」と、もともと、あまり血の巡りのよくない来林の長は必死で考えていた。
「外部の人間で、証言するやつが出てくる」と、守は噛んで含めるように教えた。「ここで暮らしてるわけじゃないから、番台に弱味を握られてない。内部の味方が解釈を変えることもできないから、言い訳できない。社会的に悪さをした人間を解雇する。これ、普通のことだ」
(小原眞紀子『神違え』)
ある集団は内部を持っており、それはある程度自律的に完結しています。それを大きく変えるためには〝外部〟の力が必要です。政治でも文学の世界でも同じことです。んで集団内部のたいていの人間は、内部ヒエラルキーが健全に機能しそうならそこに荷担し、外部圧力が有望そうならそこに乗り換える。「これ、普通のこと」でありまふ(爆)。だから集団内部で鬱屈した人間は、僥倖のように外部からの力が働いて、自分を救ってくれることを期待します。でもそりは無駄だな。
本当の意味で何かを変えられる人間はいつも内部にいるのです。んで外部の力をうまく利用する。そのためには内部で力を持ち、かつ、内部の体制を相対化して見切る能力が必要です。バランス良く刷新できれば、天下を取った後は以前と同じような体制になるとしても、何かが少しですが必ず変わっています。それが人間が短い一生にできることのほぼ全てでしょうね。
『神違え』は山城(マンション)を巡る支配権の抗争を描いた小説ですが、神話仕立てになっています。リアルであってリアルではない。つまりこの作品ではリアルに立脚しながら、リアルの上位概念としての観念(思想)が期待できるといふことでありまふ。
■ 小原眞紀子 連載純文学小説『神違え』(第03回) pdf版 ■
■ 小原眞紀子 連載純文学小説『神違え』(第03回) テキスト版 ■
Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー開催(新人支援プロジェクト)
Web文芸誌のパイオニア 総合文学ウェブ情報誌文学金魚は、文学金魚執筆者によるシンポジウムと参加者の自由な質疑応答による参加型セミナーを開催します!。
テーマは〝ジャンルの越境〟です。そしてジャンルの越境は、人の現存在では性の越境にも置き換わる。文学金魚大学校第1回セミナーでは、早稲田文学の表紙を飾った伝説の仙田学さんの美しい女装姿が見られます! あらゆる制度の脱構築を意識することで、ジャンルの越境は初めて可能になるのです。我こそはという皆さまも、ぜひ女装・男装・コスプレのドレスアップでご来場ください。 超ステキな開催会場、日仏芸術文化協会もそれって大歓迎!とのこと!
■ 日時と会場 ■
・日時:2016年06月18日(土曜日)
・開始時間:午後03時30分~
・会場:日仏芸術文化協会 (東京都目黒区中根2-19-2 東急東横線・都立大学駅より徒歩約10分)
* 閑静な住宅街の中に位置する素敵な一軒家です。
・参加費:3,500円
* 参加者の皆さんには金魚屋刊行書籍一冊(定価1,500円)をプレゼントします。
・懇親会費(オプション):2,000円
* セミナー修了後に懇親会を開催します。参加はご自由です。
■ テーマ ■
【テーマ】ジャンルの越境
純文学ラノベ、ロマンチック・ミステリ、純文学ホラー、自由な物語詩など、従来の文学ジャンルとは異なるオルタナティヴな文学を創り出すことを目指します。
【司会】
山田隆道(作家・TVコメンテーター)・小原眞紀子(詩人・東海大学文学部文芸創作学科非常勤講師)
■ プログラム(予定)■
① シンポジウム
第一部 偏態小説と純文学エンタメ小説について
三浦俊彦(作家・東京大学大学院教授)
遠藤徹(作家・同志社大学教授)
第二部 ラノベと(純)文学について
仙田学(作家)
西紀貫之(作家・フリーライター)
② リード小説大賞決定!
山田隆道(作家・TVコメンテーター)発案のリード小説(詳細は下記または『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)の大賞を決定し、大賞・奨励作については文学金魚への作品掲載を検討(バックアップ)します。
③ 第3回金魚屋新人賞第一次審査通過作紹介
④ 懇親会
いけのり(占い師・エッセイスト)の占いコーナーなど。
■ 参加お申込用メールアドレス ■
お申込みはseminar@gold-fish-press.comへ! 。氏名・電話番号、パーティ(懇親会)参加の有無を明記してください。先着50名(FB枠35名)です。会場設営の都合上、懇親会のキャンセルは
【Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー(新人支援プロジェクト)の趣旨】
・才能ある若い作家の作品が発表できない、キャリアのある作家なのに一番出したい本にかぎって出ない、学者の卵の奨学金ですら返還義務があるなど、現在ではさまざまなジャンルが細分化され、文化間の交流がなくなっています。
・こんな時代だからこそ、文学金魚は創作者と読者、ジャンルとジャンルを繋ぐメディアとして誕生しました。
・セミナー参加者は新しい文学と出版カルチャー誕生の当事者・目撃者になれるかも!
・読むことと書くことの、あのワクワク感をみんなで取り戻そう!
【リード小説とは ~あなたの〝リード小説〟大募集!~】
・リード小説とは、あなたがすでに書いた、あるいはこれから書こうとしている未発表オリジナル小説の大筋やセールスポイント等をまとめた、映画でいえば、予告編です。
・文学金魚大学校第01回セミナーのお題として、書き下ろしリード小説をツイッター上で大募集します。完成原稿があるかどうかは問いません。
・選考は山田隆道(『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)が行います。講師の文学金魚連載作家陣も選考に加わります。リード小説から作家デビューの扉が開かれるかも。
・試されているのは自己プロデュース能力です。気楽に楽しんでください!
【総合文学ウェブ情報誌文学金魚について】
・文学金魚はジャンルの垣根を取り払い、文化融合的な状況の中から新たな日本文化を創・出することを目指します。
・セミナー参加者は楽しいお題で盛り上がるもよし、懇親会で人脈を広げるもよし。新たな文学シーン誕生のワクワクする瞬間、その当事者・目撃者になれるかもしれません。
・今は積極的に自己アピールし、様々な方法で作家としての活路を切り開いてゆける時代です。ネットと紙出版のインタラクティブな関係性にリアルな人間の息吹きを吹き込んで、文学カルチャーのホットスポットを創り出そう!
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■