寅間心閑 連載小説『ど、泥卍』(第04回)をアップしましたぁ。男が求めていたのはささやかな社交辞令でした。しかしユキジおばちゃんの何気ない一言には涙ぐみそうになるのに、琴絵の「大丈夫?」という心配には苛立ってしまう。
仕事を探さなければと思いながら結局五日間も何も動けずに過ごしてしまう。飲食店勤務を素直に受け入れられないのは一度店を持ったというプライドなのか、それを潰したという卑屈さなのか。段ボール箱に埋もれた部屋、片付かないゴミ、伸びていく無精ひげ。生活のあらゆる場面で、男は少しずつ「ヒト」としての機能を手放していきます。
印象的なのは明け方の地震の場面です。命の危険が迫っても布団から動けない。それは死を恐れないからではなく、ただ生に対して鈍感になっているから。実家からの電話にも出られず、伝言だけをそっと聞く姿も切ないですね。
そこへかかってきた、オオシマさんからの一本の電話。強引な送別会の誘いは、鬱陶しくもどこか救いのようでもあります。店をやめても、人間関係まで終わらせられるわけではない。久しぶりに入った銭湯の鏡に映る、ひげを剃っても老け込んだままの自分の顔。一枚刃のカミソリという小さなディテールの積み重ねが、男の停滞と、その中にわずかに差し込む生活の気配を静かに伝えています。
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■


