ファーストクラス2
フジテレビ
水曜 22:00~
「今日は会社休みます。」との視聴率対決での惨敗が伝えられている。しかしこの「ファーストクラス」、本領を発揮しはじめたのは、この続編からと言ってよい。数字なんか関係ない。まさに「狂気のカムバック」である。伝説のドラマとなるかどうかの瀬戸際に立っている。頑張れ。文学金魚は応援する(と思う)ぞ。
前作の「ファーストクラス」は意図がいまいち、はっきりしなかった。話題にはなったし、人気も出たが、そこで描かれる「ドロドロ」、嫌らしい「マウンティング」は、多少は戯画化されているとはいえ、キレイなファッション誌編集部の実態の「暴露」といったスタンスだった。つまり現実はこんなもん、といったメッセージかと思われて、そりゃファッション誌の編集なんてママゴトしてるバカ女たちはそんなもんだろーと鼻白むしかないところがあった。
「ファーストクラス2」で示されたドラマの理念は、そんなどーでもいい仕事場での「暴露」なんかを超えて、確かに「狂気」を孕んでいる。それはテレビにはあるまじきことで、ほとんどブンガクに近い。数字なんか、とれるわけない。そのぐらい素晴らしい。
たまたま裏番組(古めかしい言い方だが)だからと言って、「今日は会社休みます。」と比較する方が間違っているのだ。綾瀬はるかと沢尻エリカとの対決という見方も違う。そもそもステージが異なるのである。「ファーストクラス」はもとは軽い深夜枠だったことを思えば、出自もまた、異なるのである。
この続編を「狂気」にまで持ち上げているのは、言うまでもなくビジネスの実業化である。ファッション誌の編集部がママゴトのような虚業なら、実際に服を作って売るというのはそれよりも金の動く実ビジネスだ。男も年増も、本気で関わりあっておかしくない。女の子同士の見栄からくる小競り合い(=マウンティング)など、どうでもいい。
なぜなら実ビジネスの世界では、勝敗は目に見えてはっきりしているからだ。漠然とした優位性を誇示し合うというのがマウンティングなら、そんなものは時間の無駄でしかない。目に見える勝利を手にしたいがために、人はなりふり構わなくなり、狂気の沙汰にも陥る。それでも心にもないことを言い合うのは、最終的な勝利への伏線、戦略であって、マウンティングなどというものではないだろう。
その狂気を表現するのに、今回は女優陣もバージョンアップしている。夏木マリ、余貴美子の迫力を持ち込んだあたり、制作者も意識して、ある枠を踏み外そうとしていることがわかる。特に目が離せないのが、ともさかりえの顔の歪みだ。実にシュールである。素晴らしい。
深夜から通常の時間帯に進出することで、フツーに堕落してゆく番組は多い。「ファーストクラス」は間髪入れずに時間帯を前倒しすることで、狂気への勢いにむしろ弾みを付けたように見える。ちまちましたイケズは許せても、攻撃的な狂気には異和を覚えるのがフツーの視聴者というものだが、それを無視したわけではあるまい。ただ、挑戦し、試そうとしているようには見える。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■