女はそれを許さない
TBS
火曜 22:00~
なんというクラシックなタイトルだろう、とまず思う。確かに女弁護士ものなど、いまや新しくはなく、女二人の組み合わせというのも別にめずらしいものではない。ただ、タイプの違う女優二人を使えるという豪華さ以外には。
というわけで、つまらないかというと、まったくそんなことはないからエンタメというのは一筋縄ではいかない。結構、見てしまう。見始めると、かなり面白い。最初のツカミは、やはり寺島しのぶだ。ところでしかし、このドラマの主演は深田恭子だそうだ。そう言われればそうに違いないのだけれど、ちょっとびっくりした。テレビドラマでの深キョンは特に今さらの感があり、寺島しのぶが出てるから見ようとするのではないのか。
特に今さらの深キョンは、新米のときに法廷で失敗したことがトラウマとなり、弁護士資格を持ちながら居酒屋などでアルバイトを続けていた。一方の寺島しのぶが演じる女性弁護士は腕利きだが手段を選ばず、敵を作って巨大弁護士事務所を追われ、弁護士資格停止となる。で、ペーパー弁護士の深キョンを「歩く弁護士バッジ」として利用し、自身は助手の肩書きで弁護士活動を再開する、というあらすじである。
つまりは寺島しのぶの方がアクティブな弁護士らしさを発揮しているから、最初の方ではヒロインめいているが、徐々に深キョンが、未熟で頼りない存在から成長をみせて真価を発揮するという筋書きだろう。特に今さらの天然ぶりを一番生かせる役どころではある。
それでたぶん最後は成長した深キョンが力を尽くし、寺島しのぶを追い出した事務所の男どもに一泡吹かせて最終回となる。そこんとこは見えてるけど、それを見たくないかというと、そうでもないからエンタメというのは一筋縄ではいかない。
それをなんとなく見たいのは水戸黄門が悪者をやっつけるのと同じだし、フェミニズム的なドラマの中で、社会的な立場のある男たちがやたらと憎々しげであるからでもある。だからそれは効果を上げてはいるのだけれど、こういう場面での竹中直人はもう少し何とかならないだろうか。漫画が原作というわけでもないらしいドラマで、竹中直人のところだけまるで漫画だ。現実において厄介なのは、巨大組織も男たちも、そんなにわかりやすく横暴に振る舞ってはくれない、というところだ。腰も低く、人当たりもよく、他人を利用してやんわりと懐柔し、微妙な圧迫を加えてくる。
対して弱者を演じる依頼人も、そんなに間抜けでいてはくれない。ここでは弁護士を騙し、裏切る依頼人は多く出てくるけれど、そんな犯罪者まがいの程度の低い依頼人ばかりなら、むしろ話は簡単だ。現実には、弁護士が思いつくぐらいのことはすべて気がついているのが依頼人、当事者というものだ。たいていは自分が直接出てゆくと格好悪いから代理人を立てているに過ぎず、その構造は寺島しのぶの代理として前に出る深キョンと変わらない。
法律もの、法廷もので視聴者を心底感心させようとすれば、結局は綿密な取材に基づいた、それこそ漫画の原作にでも頼るしかないだろう。さもなければ多少規格外れのヒーロー・ヒロインである弁護士の成長物語となるわけで、視聴者は都合よく間抜けな依頼人の立場に自らを置き、それを見守るしかない。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■