リーダーズ
TBS
3/22(土)23(日) 2夜連続スペシャル
年度末のスペシャルドラマである。円安効果で勢いづくことが期待される日本一の企業、トヨタがモデルで、初の国産車を軌道に乗せるというストーリーだ。
この時期のスペシャルドラマに、木村拓哉主演の「宮本武蔵」があったが、予想に違わず、あまり数字が振るわなかった。予想というのは、宮本武蔵が悪いわけでも、木村拓哉が悪いわけでもなくて、キムタクに宮本武蔵はどうかなあ、ということに尽きる。
芝居の上手さというのにもタイプがあって、キムタクというのは、近所のあんちゃんを彷彿とさせるリアリティが素晴らしい。ジャニーズ系で芝居が上手いというのは、たいていそうだ。幼いときから男の子たちの集団で揉まれて、そこでの処し方が芝居と紙一重となっている。
時代劇というのは、それと少し違う。そこらにいそうなあんちゃんたちとの距離を感じさせてくれなくてはならない。なぜなら登場する彼らは、もうすでに死んでいるのだ。生々しさが軽々しく映れば、逆にドラマであることが全面に出てリアリティを失う。
「半沢直樹」を始めとして、経済ドラマはこのところ概して好調だ。それは現代における時代劇の様相を呈する。近所のあんちゃんが「あん?」と言う代わりに、見栄を切っても大立ち回りを演じても、追い詰められた男たちなのだ、という前提があれば、おかしくはない。
芝居の上手いアイドルが大人の役者へと脱皮するには、だから時代劇というのはなかなか難関で、むしろ芝居は上手くない方がいいくらいなのだが、この経済ドラマというのも資質が必要だ。
「リーダーズ」の主演は佐藤浩市、クルマの CM でもお馴染みだが、何と言っても経済ドラマに欠かせないのは橋爪功だ。この人が出ているだけで間違いない、と思ってしまう。いるよねーこういう人、特に年配の経済人に。以前、NHKのドラマ「監査法人」で、解任された社長か何かを演っていた橋爪功の表情が、知り合いの年寄りの税理士にそっくりで仰天した。
佐藤浩市ももちろん上手いのだが、こういうまっとうな役だと、ちょっとつまらない。CM みたいだし。いつだったか、御巣鷹山に墜落した日航機を取材する新聞記者の役で、これがまた知り合いの雑誌編集者(石川さんではない)とそっくりで仰天した。その人が佐藤浩市ばりにいい男というわけではなくて、無表情でヒドいことを言い、なんと怒られようと蛙の面にしょんべん、というその顔つきが、であった。あ、マスコミ人って、皆そんなか。とにかくそういう役ができるようになるには、役者さんにも社会性が必要で、アイドルが三十路を越えたというだけでは無理かもしれない。
ワルい銀行屋がはまってしまった感のある香川照之といい、やっぱり大トヨタがモデルとなると、ドラマとしては型通りというか、いまひとつの感も。言うまでもなく日本そのものを象徴する企業の来し方を振り返り、愛国心と感慨にふける、というのも年度末に相応しい愉しみではあったが。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■