プロフェッショナル 仕事の流儀
NHK
月曜 22:00~
あの「プロジェクトX」との違いは、文字通りプロジェクト単位か、プロフェッショナルと呼ばれる人単位か、ということだ。そのことで若干、重くなった気がする。文学的になったというか。「プロジェクトX」では、民放でパロディの傑作があったが、それは少し難しくなったかもしれない。
では、つまらなくなったか、と言うと、そんなことも特にない。ただ、マサチューセッツ工科大学などの研究でもあるように、人の能力というのは他者との組み合わせ、プロジェクトの性質によって驚くほど変わることがある。なんということのない普通の社員がたまたまグループとなり、あるプロジェクトが大成功してしまう、というドラマが観られなくなったのは残念だ。
この、たまたまの組み合わせによる大成功からは、しかし学ぶことはあまりない。勇気づけられるということはあるかもしれないが、ただ面白いだけだ。会社に行って、自分が統率する部下たちを分析したり、グループ化のやり方を反省したりしても、たぶん何も変わらない。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、それよりは参考になる気がする。グループのメンバー、他者への期待はたいてい徒労に終わるので、プロフェッショナルの仕事に自身が納得する方が充実感はある。つまりはより生産的になったとも、より個別化が進んだ時代に対応したとも捉えられる。
プロと呼ばれる人たちの慣れた手つきを観ることは、ジャンルを問わず心地よい。さくっとした合理性と、全体の見通しのよさと同時に、普通は気づかない細部の落とし穴をすべて知悉している安心感。しかしテレビ番組にするには、それだけでは足りない。それほどのプロフェッショナルにして、いまだ難所と思われるところを示すことが目玉となる。
すべての経験とこれまでのノウハウを結集し、なお未知であるものに知力と勘を傾けること。その姿がクローズアップされ、解決した瞬間にテーマソングが流れる。その物語にも安心感があり、心地よくもある。
ただ毎回、これらのプロフェッショナルたちが皆、ひどく似ていると思う。プロとして出来上がってゆくと、人間というものはそのようになってゆくのかもしれない。あるいは番組のパターンが見事に出来上がっているので、その型にはまって見えるところがあるのかもしれない。
そうであったところで、プロフェッショナルたちの手腕と真摯さが視聴者に伝わるのなら、何ら問題はない。ひとつ危惧されるのは、「プロジェクトX」と異なりパロディが作りにくいこの番組の “ 悪意のパロディ ” が出現したら、ということだけだ。真摯なプロフェッショナルの姿がパターン化されれば、改変されない通貨と同じように偽造できるようになる。昨今あったようなトラブルの当事者が一人でも紛れ込めば、そのパロディ的な事態によって、本物のプロフェッショナルたちが傷つくことになってしまう。人選には、よほど気を張る番組だろう。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■