人狼 ~ 嘘つきは誰だ? ~
フジテレビ
不定期
真夜中にやっている。ゲームの参加者は、田村淳、水野美紀、狩野英孝、小島瑠璃子、森山直太朗ら9人だ。こんな面白いゲームがあるのか、と感心してしまった。しかしこれは番組オリジナルではなくて、昔からヨーロッパに伝わるものだという。
基本的には、5、6人から20人ぐらいの人数で行うらしく、それら村人たちの中に何匹か人狼が潜んでいる、というものだ。誰が人狼かは、最初に配られるカードによって決められている。もちろん人狼も村人も、自分のカードを人に見せてはいけない。
夜になるたびに、人狼は村人を一人ずつ食ってしまう。昼の間に、人間たち(および人間のふりをしている人狼)は話し合い、人狼ではないかと怪しまれる者を一人ずつ追放できる。全部の人狼を追放できれば、翌晩は誰も死なず、村人の勝利となる。人狼と同数まで村人が減ると、人狼の勝利となる。
その他の細かいルールには、様々なバリエーションがあるらしい。特定の人間が村人か、人狼かを知ることができる「占い師」がいたり、また特定の誰かが人狼に食われるのをブロックしてあげることができる「騎士」がいたりするのは、この番組のルールである。あるイベントでは総勢200人でやったそうなので、そうなるとグループに分けたり、安全地帯を作ったりする必要が出てきて、役割以外にもルールが発生する。もしかすると、このゲームの本質的な面白さは、このルール発生にあるのかもしれない、と思う。
古くからある遊びなのに、次々とルールが派生するので、いくらでも現代化できそうだ。そしてどのように変化しても「他人への疑い」は深まる一方で、まさしく根底の不在。さすがはヨーロッパのゲームだ。
ただ、番組を見ているだけで最初に惹きつけられるのは、鬼気迫る疑心暗鬼である。予算のつくテレビ番組だから、普通のゲームの場よりも手の込んだ演出が可能で、夜の暗さの中で村人がひっそりと消え、また人狼と名指された者が猛スピードで奈落へ消えてゆく。そうなると、擬似的なものでも生存本能が強く働くとみえ、何としても生き残ろうとする様子に切迫感がある。出演者は皆、顔の知れたタレントさんたちだが、追い詰められて素に戻っている。これから皆でこのままファミレスに移動し、続きをやりたいと言い合っているのも、あながち嘘でもないように聞こえる。
ただ、シナリオというほどではないにせよ、テレビらしい計算はなくてはならなくて、人狼にしたいのは、やはりロンブーの淳をおいてはいない。感心するような嘘つきというのは頭の回転が早いのはもちろん、面白くするにはただ、バレなければいいというものではない。話し合いの口火を切り、事態を動かしてくれなくてはならないし、それが一見、村人を守るために見えなくてはならない。それでうっかり墓穴を掘ったときの淳の様子は、あの淳にしてからが、と思わせるものだった。
この淳にしろ狩野英孝にしろ、逃げも隠れもできないキャラが立っているから、しかし安心して見ていられるのだ。200 人もいる見知らぬ他人がすべてそうだったら、そう、世の中はこういうものだった、と思い出し、思い知らされることになろう。ゲームでよかった、と。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■