池田浩さんの文芸誌時評 『No.008 S-Fマガジン 2013年05月号』 をアップしましたぁ。9年ぶりに新作が刊行された森岡浩之さんの 『星界』 シリーズ、『星界の戦旗5 宿命の調べ』 を取り上げておられます。大人気シリーズといふこともあって、渡邊利道さんの 『星界』 に関する評論と 『星界』 シリーズブックガイド、シリーズ年表の増補版も収録されている特集号であります。
池田さんは 『舞台をスペース (宇宙) に置くのは、社会構造から前提を奪うためで、人間たちの器としての社会をまず現実と切り離し、無色透明にすることで (中略) その形づくっている透明な器がどのように変容してゆくのか、思考実験の場と化すためだろう。とすれば、スペースオペラとは、スペースであることは手段でしかなく、あくまで人間たちが織りなすオペラである』 と書いておられますが、その通りだと思います。スペースオペラのSFは、人間関係の本質が描かれている場合に傑作が生まれています。
文学金魚の批評家の皆さんたちの間で何度も議論に上がっていますが、その意味で日本の歴史小説とSFはとても近しい特徴を持っていると思います。過去も現在も未来も、人間社会が国家や法や、人間関係でがんじがらめに縛られていることには変わりありません。しかし現在とは明らかに異なる舞台を設定すれば、その枠組みを少しだけ緩めてやることができる。作家がどんな質の緩め方を求めるのかによって、作品が歴史小説になったりSFになったりすることは、あり得るだろうと思うのであります。
■ 池田浩 文芸誌時評 『No.008 S-Fマガジン 2013年05月号』 ■