お願い!ランキング 美食アカデミー
テレビ朝日 火・木 0:20~1:15
食べ物を扱う番組は数字が取りやすいと言われる。それはたぶん、食というのが誰にでも関わることだからに違いない。であるから食についての番組は、テレビ草創期以来、数多く制作されてきた。それはどんどんラディカルの一途をたどり、「食べ物をおもちゃにする」といった批判をも浴びてきた。
食べ物を投げつけるような、つまりは無駄にする行為を面白がるのは、そもそも民度が低すぎる。おもちゃにするのも程度問題で、高級レストランや料亭といったところは、食べることにエンタテインメントの要素を取り入れなくては成り立たないのだから、何事も高度な洗練とおもちゃ化は紙一重ではある。
「お願い!ランキング」の中でも「美食アカデミー」のコーナーは、もちろんテレビ番組には付きものであるマスからの批判や好き嫌いは避け得ないが、総じて難のないものに仕上がっていると思う。取り上げられるのがファミレスやファストフードなど、多くの視聴者にとって身近で、状況によってはなくてはならない大衆店であることで、おもちゃ化されない切実感のある “ 美食 ” の試みなのが興味深い。
というのもファミレスやファストフードの批評に、曲がりなりにも “ 美食 ” の冠を付けられるようになったのは、ここ最近のことなのだ。好景気にわいていた頃は、それらの店はマズいのが当たり前、若者しか入らないところだった。
不景気の中での過当競争で、どのチェーンもある程度は真剣に味に向きあわざるを得なくなった。かつての価格と頭の高さ、人間に食わせるとは思えない代物を平気で出してきたことを思い出せば、食のプロと称する「ちょいキビ判定員」の顔色を窺い、その言葉に一喜一憂する業者さんたちの姿は微笑ましく、それだけで好感が持てる。
この番組が販促であるか、ヤラセがあるのかといったことは、だからあまり大した問題ではないように思う。リアルに営業するチェーンを取り上げる以上、販促の側面がないわけはない。ヤラセといえば、最後に出てくる料理に高得点がつくというのは編集によって可能でも、それで店側が大喜びするという筋書きそのものは、やはり時間軸に沿うしかないはずで、判定員が食べる前になぜ順位がわかるのだろうと、常々不思議ではある。
まあ、それだからヤラセだというには、店側の表情は真に迫りすぎていて、それが最大の販促なのだから、順位も点数もどうでもいい。
この番組が好きではないという向きは、たいてい店の担当者への同情だったり、判定員への反感があったりらしいが、店の方もメリットがなければ出演するはずがない。販促という面ばかりでなく、忌憚のない意見というのは意外と聞く機会がないものだ。
番組の構成もコンセプトもある中で、本当に「忌憚のない意見」かどうかについては、もちろん疑問の余地はある。しかしながら一部の視聴者の眉をひそめさせるほどずけずけ言っているなら、まず “ 合格 ” ではないか。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■