一.ソニック・ユース

すっかり、ではなく、うっかり夏の気配。もう汗ばまなければいけないなんて。それでもまだ朝晩はひんやりする瞬間がある。そこを狙ってグイッとねじ込みたいのが湯豆腐。なかなか外で頼まない分、寒い時期はちょいちょいコレ。昆布、長葱、豆腐に料理酒垂らし、お行儀悪く鍋から直接。台所でぼくはきみに、ってヤツです。もちろん外と同じく立ったまま。とりあえず一口食べて、ようやく主役の準備。手頃なコップに酒注いで背後のレンジでチン。湯豆腐にはやはりコレ。2センチほど注いだのをチビチビ。まだ昼前か、なんてしみじみ贅沢を噛み締めつつ、もう一度2センチ分をチン。熱さを保つにはこれが一番。なかなか外だとこうはいかない。そもそも湯豆腐なんて熱気を食うためにあるんだから……なんて言うと事情通から怒られそうだけど、こちとら40円の豆腐に2リットルの紙パック酒。熱気が肴の小宴、どうか見逃して下さい。先日そんな様子を友人に話すと「ギリギリですね」と苦笑い。つられて頬を緩めつつ、奥底で感心してしまった。そうか、ギリギリか。どの意味かは分からないが案外悪くないワードチョイス。
なんだよコレ、という音楽。質の悪い音楽ではなく、未知の角度から創造された音楽という意味ならば、決して嫌いではないし興味津々、というかこれぞ醍醐味。例えばノイズ系やフリージャズのような「適当にやってんじゃないの」タイプ。これは結局好き嫌いの話。高度な技術に裏打ちされていようが、人に話したくなるような変な方法で録音していようが、聴こえなければ仕方ない。実はさ、というエピソードで聴こえ方が変わるのはやはり不純。そして不純なモノには魅力が宿っている。このタイプで好きなのはルー・リードの大問題作2枚組『メタル・マシーン・ミュージック』(’75)。一時間越えのノイズは好みの音色だが、「レーベル史上最も返品された」とか「2枚目の裏には仕掛けがあって無限にループする」という逸話の威力は甚大。怖いもの聴きたさでつい近寄ってしまう。そう、コレ系って自分から恐々接近するのが常。でもソニック・ユースは違った。向こうから来た。無論ニルヴァーナの大ブレイクによってUSオルタナ/グランジ界隈が注目されるという下地はあれど、強力だったのはメンバーのキム・ゴードンが設立したファッション・ブランド「X-girl」。コレが流行った。実はそれまであまり得意ではなかったが、当時のシングル「Bull in the Heather」(’94)は良かった。ギリギリ、ポップとして成立していると思えた(ロックとしては最初から強固に成立しているが、それはまた別の話)。PVでは妊娠中のキムが「X-girl」のTシャツを着用している。
【 Bull In The Heather / Sonic Youth 】
二. ジーザス・ジョーンズ

ここでいう「ポップ」は特別難しい意味ではなく、言葉のイメージそのまんま。条件を強いて挙げるなら、甘めの旋律と柔らかなリズムの華やかなハーモニー。馬鹿舌なので分量は多ければ多いほどいい。むせ返るほど甘く、とろけるほど柔らかく、恥ずかしくなるほど華やかに、がベスト。もちろん変な味になるけど、それがいい。個人の感想だもの。幸運にも昔から好きな楽曲をいまだに同じ熱量で推せるけど、少々照れ臭いのは意外と派手すぎた時。パフェにまぶすカラースプレー、あれをかけ過ぎた感じ。こんなんだっけ、と苦笑いしたりする。最近ふと浮かんだのはジーザス・ジョーンズ。時代の徒花扱いされることも多い彼等。そのギミックであるデジタルサウンドって今振り返るとトゥーマッチなのでは? 早速振り返ってみたがギリギリセーフ。やはり楽曲自体がしっかり甘いのでギミックが浮かない。アルバムなら『ダウト』(’91)がベスト。前作のデビュー盤『リキダイザー』(’90)は甘みが足りずギミックが目立つ。相性ってやはり大切。
ランチが終わってから夜営業までの間、所謂「中休み」とは相性が悪い。即ち、訪れてみたら中休み。コレ、本当に多い。呑むことを考えると昼の混雑時は気が引けるし、夕方にだと勝手に気が騒ぐ。ベストはその間。つまり中休み直撃。ところが先日はギリギリ入店できた。本当、レアケース。五反田の居酒屋「S」のランチタイム、ラストオーダー一分前。入口すぐのスペースにて立ち呑みなので、本当にサクッと。そば酎ハイの肴は串天ぷらをサクサクッと。中しっとりの鶏天、美味しゅうございました。次はもう少しのんびりで。
【 International Bright Young Thing / Jesus Jones 】
三.ウィーナーズ

時間ではなく期限に間に合うギリギリもある。書店がルーツの下北沢『V』で再びヒューガルデン生のセールが再び。税込390円。この値上げ塗れの御時世に素晴らしい。ただ気付いたのが少々遅く、残りあと半月! 後悔している暇はなく先ほど来訪いたしまして。半額だから倍美味い、なんて品のない言葉は胸に仕舞ってゆったり堪能。そうそう、此方は中休みがありません。
明るい楽曲はよいけれど、その匙加減はなかなか難しい。喜怒哀楽でいえば、喜や楽の分野。垂れ流しがちな怒や哀に比べて堪えやすい感情だからか、明るすぎると妙に醒めてしまい、結果うまく乗り切れないことが昔から多々ある。ただ最近、その難しさを軽やかに飛び越えるパターンを発見。時間は日曜朝、場所はテレビの前。これ、特撮好きとしては当然のルーティン。少し前に終了した、スーパー戦隊シリーズ50周年記念作品『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(’25)の主題歌「WINNER!ゴジュウジャー!」がそれ。キッズのテンションを高める明るいアレンジだが、繊細な旋律が上滑りさせていない。おお、と驚きクレジットをチェックするとロックバンド、Wienners。キャリアを見て納得。作詞作曲担当のフロントマン・玉屋2060%は豊富な楽曲提供経験の持ち主。特にアイドル多め。おお、FRUITS ZIPPERの一番好みの曲も彼なのか! なんて大盛り上がりして過去作を聴きまくり。どれも相当華やかなアレンジだが、爽快なスピードと上質な旋律が下支えして聴きごたえ抜群。
【 TOP SPEED / Wienners 】
寅間心閑
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