NHK総合
火曜日 22:55~
こういうドラマは女性がレビューした方がいいのかもしれない。が、元バレリーナの草刈民代が主演なので、見てしまった。
女性目線で言えば、結構共感できるドラマなのだろう。草刈民代演じる主婦も、磯野貴理子演じる親友も、そして夫の愛人に至るまで、女たちは誰もが “ 男前 ” なのだ。SNS (フェイスブック、と言わないのは NHK だからか?) で再会した同級生と一緒になりたい、と言い出した夫だけが馬鹿げた存在として描かれている。終いにはその愛人にまで、現実逃避してるだけ、と看破される。ま、男なんてそんなもんだが。
そのへんのリアリティを認めるのに、やぶさかではないが、一方ではちょっと妙なところもある。ドラマだからね。たとえば草刈民代。ファンだから見たのだが、46歳の主婦、という設定には残念ながら老けている。いや、美しさが落ち着きすぎている、というべきか。
普通の夫婦という設定だから、旦那の方が歳上だろう。するとその同級生であった、森口瑶子演じる愛人の方が主人公の主婦より歳上になる。が、こちらの方がずっと若々しい。愛人であるからには、そうでなければ絵的に収まらないのかもしれないが。
もっともこの愛人、女性雑誌の敏腕編集長とのこと。子供を持たないキャリアウーマンは確かにやたらと若々しいことがあるから、そうするとこれはまた、ずいぶんと痛ましいリアリティだ。とはいえ、この主婦、夫に捨てられて勤めはじめたホテルで、そこの御曹司に思いを寄せられるってんだから、よくわからない。
しかしここは男目線で言うと、若々しい女がいいなら若い女と付き合えばいいわけで、わざわざ年増 ( 熟女、か ) にちょっかいを出すのは、若くないところがいいんだろう。女性の視聴者の共感を得るにも、それがあらまほしき、ということか。若い男の子がキャリアウーマンの美魔女と恋に落ちましたじゃ、面白くもなんともない。そもそも皆さまのNHK が、おおかたの主婦に申し訳が立たない。
で、王子と呼ばれるこの御曹司だが、ほんとにひと昔前の塗り絵の王子サマのように頭がデカくて野暮ったい。見るからに子供子供した風情の男の子というキャスティングで、要するにこれは今流行りの歳の差ナントカの話でなくて、継母と父に冷たくされている王子の母恋しの物語なのだ、とわかる。さすが皆さまの NHK 。
御曹司と主婦は表向き反発しながら ( ! ) 手紙を介して近づいてゆくという、またえらくクラシックな設えだ。秘書のジイさんが手紙にかかわり、主婦と御曹司との仲をやたら取り持とうとするのは意味がわからないし、御都合主義っぽいが、母恋しの心を察してというオチだろう。
磯野貴理子演じる主婦の親友が、あくまで主婦の肩を持ち、銀行の同僚である夫の方を責めつづける、というのもあり得ない光景だ。社会的には、キャリアウーマンは男の一種だ。専業主婦の生態を白眼視するし、会社で顔を合わせる同僚に、そのプライベートのことを言い募ったりもしない。だが御都合主義だって、グリム童話ばりのファンタジーだっていいじゃないかとも思う。社会的な枠組みを超えて、女同士が一瞬、完全に相手を認め合う奇跡もまた、なくはあるまい。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■