寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『助平(すけべい)ども』『十六、鶏蜥蜴』をアップしましたぁ。『助平ども』は主人公とナオの関係、主人公と妹、それに安太らの関係が入り交じって進んでゆく小説です。今回はナオのちょっとしたバックグラウンドが明かされます。
ナオの刺青は〝ユリシーズ〟という蝶ですが、もちろん『オデュッセイア』と関連しています。『イーリアス』と『オデュッセイア』はともにホメロスが書いた長編叙事詩ということになっていますが、制作年代(成立年代かな)から言うと、『イーリアス』の方が遙かに古いというのが定説になっています。登場人物たちの自我意識のあり方が全然違うんですね。
『オデュッセイア』の主人公オデュッセウス、つまり英語名ユリシーズは、英雄ではあるんですが権謀術策に長けた人で、『イーリアス』のアガメムノンやアキレウスに比べると臆病者と言えるほどです。セイレーンの声を聞きたい、だけど死にたくないというわけで、部下の耳を蝋で封印した上で、自分だけマストに身体を縛り付けて聞いたというエピソードは有名です。
『助平ども』の主人公は文学的素養を感じさせない男ですが、当然、作中人物と作家のレベルは違う。ユリシーズが一つのキーになっているのは間違いないですね。で、小説はここからですよね。
ユリシーズは無事妻ペネロペの元に帰還するわけですが、『助平ども』はどーなるんでしょ。21世紀は残酷な時代なのか、あるいは調和を求めるのか。ストーリーだけでなく、小説の大局的構造としても、寅間さんの思想が表現されるであろう小説です。
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十六、鶏蜥蜴』縦書版 ■
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十六、鶏蜥蜴』横書版 ■
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