寅間心閑(とらま しんかん)さんの新連載小説『助平(すけべい)ども』『一、モーパッサンのバーバラ』(第01回)をアップしましたぁ。寅間さんの連載小説第四弾です。タイトル通りのスタートですな。意図したわけではないですが、文学金魚掲載の小説はちょいとインテリ系の観念系です。それに対して寅間さんの小説は地面から生えてきたような感じだなぁ。ただま、観念から入ろうとリアリティある現実から入ろうと、優れた小説が描く軌跡は似たようなものです。
『助平ども』はモロにセックスシーンから物語が始まりますが、小説でセックスシーンを描くのはけっこう難しい。セックスシーンて、なんやかんや言って印象に残りやすいんです。映画などで、女優の誰それさんが脱いだといったことが話題になりやすいのも道理です。だから不用意に物語にセックスシーンを入れると、テーマがぼやけてしまうことがあります。ただセックスシーンがクライマックスになる作品は意外と凡庸。テクニカルな意味でも作家の成熟度が試される物語要素です。
もしセックスシーンが物語の小道具に過ぎないなら、それを非日常ではなく日常にしてしまう必要があります。野坂昭之『エロ事師たち』方式ですな。身も蓋もない言い方をすれば、セックスって常同性。つまり同じ事を繰り返している。SMやスカトロなどのアブノーマルセックスでも、そういった嗜好を持つ主人公を設定すればすぐにあるパターンの繰り返しになります。技術的なことを言えば、作家が恥ずかしがってドキドキ書いていると未熟さが出やすい。ズバリと露骨に書きまくる方がセックスシーンのインパクトは薄れます。
寅間さんの『助平ども』がこれからどういう展開になるのかわかりませんが、恐らく主人公とあんたの関係性がじょじょに主題になってくるものと思われます。この作家、ある時期まで未知の世界を知っているかのような偉大と思われた先行者に素直について行き、絶望と失望と憎悪の入り交じった訣別をした経験を持つ気配があります。つまりある世界から頭一つ抜けた。渦中にいたときの切迫感とその抜け方が読みどころになるやもしれません。
■ 寅間心閑 新連載小説『助平(すけべい)ども』『一、モーパッサンのバーバラ』(第01回) 縦書版 ■
■ 寅間心閑 新連載小説『助平(すけべい)ども』『一、モーパッサンのバーバラ』(第01回) 横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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