ラモーナ・ツァラヌさんの『青い目で観る日本伝統芸能』『No.023 江戸時代の能とそれ以前の能の面影―古本による「水無月祓」』をアップしましたぁ。国立能楽堂7月月間特集『江戸時代と能』から、7月3日公演の能『水無月祓』を取り上げておられます。シテは文学金魚でインタビューさせていただいた観世銕之丞さんで、演出検討も銕之丞さん、それに山本順之さんが担当しておられます。特集『江戸時代と能』は、『観世元章(1722年‐1774年)の活動と関わりのある演目を四つの公演にわたって紹介することが、この特集企画の目的』(ラモーナさん)だそうです。
『水無月祓』は物狂能の一つです。生き別れになった親子や男女が再会するというストーリーですね。ラモーナさんは、『この能は・・・世阿弥の伝書で言及されているので、世阿弥作だというのが定説になっている。つまり古い能で、応永年間の観客がどのような物語を好んでいたのかを伝える貴重な作品である。・・・現行の「水無月祓」は、男が女に別れを告げる場面抜きで上演される。これはより洗練された能の形を追求した観世元章が、江戸中期に行った詞章の改訂の影響である。しかし本公演は・・・この作品の元来の在り方により近い演出で上演された。そのため主人公の女がどのような過程で物狂になったのかがより丁寧に描かれており、分かりやすく馴染みやすい内容になっている』と批評しておられます。
『さんせう太夫』(安寿と厨子王丸)もそうなのですが、室町時代には親子、男女の生き別れがかなり多かったようです。どーもそういった悲劇が日常的に多発していたらしひ。日本史を習った方は記憶をリフレッシュしていただくと思い当たるでせうが、室町時代って長い割にはちょいと地味なイメージがあります。前後の鎌倉、戦国時代の方が活き活きしております。しかし室町時代にはなんか不気味な胎動のやうなものがあります。幽霊が主人公の能(夢幻能)とか、絵から色が抜け落ちる水墨画の流行とかですね。お能の研究はそういった室町精神世界を、より深く解き明かすためのカギでもあるでせうね。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』『No.023 江戸時代の能とそれ以前の能の面影―古本による「水無月祓」』 ■