星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第24回)をアップしましたぁ。今回掲載した場面では、光源氏が乳母を見舞った帰りに、隣家の白い夕顔の花とともに扇に載せた歌が届けられるという物語の幕開けです。王朝物語ですねぇ。
源氏は返歌を待っている。歌を贈られ、歌を返せば容貌などはわからなくても、その人の教養や感情が読み取れる。歌物語とは、歌から始まる物語のことです。最短の歌物語といふか、ほぼ純日本的歌物語は言うまでもなく『伊勢物語』です。貴公子業平は冷や飯食いでしたが、光源氏は文字通りのプリンス。でも業平と光源氏、共通点が多い。
「夕顔」という植物はウリ科の一年草で、夕暮れ時に白い花を咲かせ夜明けとともに萎みます。その儚さが、帖全体を貫く女君のイメージと重なるよう意図されています。またこの帖には「河原院」をモデルにしたとも言われる廃院の場面が登場し、王朝文学における〝怪異譚の系譜に連なります。
河原院の主人は言うまでもなく源融。融のおとどですね。『伊勢物語』の主人公は業平ですが、始まりは源融の歌の引用です。そして『源氏物語』への『伊勢物語』の影響はかなり濃い。んでそれが英語に翻訳され、それをさらに星さんが翻訳する・・・。テキストは無限循環するのです。どこまで言っても引用の系譜と捉えることもできますね。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第24回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第24回)横書版■
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