全日本フィギュアスケート選手権 最終日
フジテレビ系
12月23日 20:12~
平均視聴率は関東地区が30・0%、関西地区が28・6%、瞬間最高視聴率は関東地区が37・9%、関西地区が36・1%で、鈴木明子選手が初優勝を決めた場面だったそうである。鈴木選手の出身地、名古屋地区は平均視聴率が36・6%、瞬間最高視聴率は41・9%。この名古屋は、3位となった浅田真央選手の出身地でもある。
スポーツ中継で高視聴率を叩き出す可能性があるものと言えば、オリンピック中継を除いては、サッカー、野球とフィギュアスケートだろう。サッカーは国際試合のときの愛国心の高まりから、野球はめったにないすごいシーソーゲームのときに数字が伸びる。そしていずれも本当に熱心なファンはその競技のプレーヤーだったことがあり、盛り上がったときだけ観る人々、追っかけの女性たちと続く。フィギュアスケート中継の高視聴率はしかし、これらとは趣を異にする。
今回は特に3つのオリンピック出場枠を争う大会であり、視聴者もまた選手同様に、その意味を理解している。他でもないオリンピックの金メダルは誰にとっても、またどこの国にとっても狙ってとれるものでもないが、少なくとも日本の選手層のレベルの高さは男女ともに世界トップだろう。と、皆が知ってるようなことを今さら書いても始まらない、と思えるくらい、そんなことはあまねく知られている。しかしながら私たちのほとんど誰も、フィギュアスケートなどやったことはない。ボーイフレンドと行ったスケートリンクで借りた靴がフィギュア用だったぐらいが関の山だ。
そのたいていの私たちの目には、アクセルとルッツの区別もつかないし、「回転不足!」というのも解説者の言うののオウム返しに過ぎない。派手に何回転んだかはわかっても、「減点1」自体はたいしたことないように聞こえる。それに付随して基礎点がどうとか加点がこうとかいうのは、判定員のデスクの上の話だ。野球のスコアブックのように誰もが付けられる記録ではない。
にも関わらず、私たちはフィギュアスケート中継を観るし、その出来不出来がわかっている気がする。まあ、延々と観続けてもゴールしたことしかわからないサッカーよりは。表情がいいとか、なんとなく元気があるとかないとか、それだけでその数分に凝縮された人のあり様の全体像を見てとったと思えるのだ。それは単なる勘違いや思い込みとは言い切れない。
優れたスポーツライターは、競馬の馬の色艶を見てとるように、起こるべきことを予感するらしい。優れたスポーツライターでも何でもない私ですら、なでしこジャパンが優勝したあの明け方、たまたま目覚めてテレビを付け、飛び込んできた日本チームの笑顔を見た瞬間、これは決まるなと予感したぐらいだ。スポーツ観戦はゲームの行方を追いかける楽しみのほか、限界ぎりぎりに立つ人の姿に何ごとか腑に落ちる、心底納得するものを見せられるということがある。
今回優勝してソチ出場を決めた鈴木明子選手を初めて観たのは、前のオリンピックの選考会だった。もう3枠ほぼ決まったものと思っていたが、拒食症を長く患って復帰したという鈴木選手に、こんなに楽しそうに滑る人を落としていいものだろうか、と考えてしまった。フィギュアスケートはパフォーマンスだから、納得の共有のされ方には、ゲーム競技以上のものがあるわけである。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■