ガイアの夜明け
テレビ東京
火曜 22:00~
テレビ東京を観る機会が増えているような気がする。東京ローカルっぽい微妙さ、しかもキー局という矛盾している感のある感じが、一つの方向性というか、ブランドとして確立しつつあるのではないか。
地球最期の日にも、というテレビ東京をアイデンティファイする定義は有名だ。そんなときにもテレビ東京にチャンネルを合わせれば、芝の上をコロコロとゴルフボールが転がり、「パーです。」とやっているに違いない、と。そう言われていた頃というのは、たぶんテレビ東京のコンテンツの貧しさや平板さを揶揄していたのだろう。
昨今のテレビ東京の快進撃、とまでいかないまでも、微妙なヒットの数々は、他のキー局の真似や後追いで劣化したそれに成り下がるのでなく、コンテンツの貧しさや平板さ、あるいは東京ローカル性をむしろ逆手にとり、その結果として他局の番組よりもシャープに仕上がってはいないか。とすれば、漠然としたマスとしての視聴者を、漠然とした内輪ノリや、漠然としたきれいごとに巻き込もうとする他局の番組の方が不毛に映る瞬間がある。
「ガイアの夜明け」は、内容としては NHK スペシャルで取り上げてもおかしくはない。取材された細部も、十分に興味深い。NHK スペシャルはスケールがあり、視点は「社会」だが、「ガイアの夜明け」の視点は「経済」だ。切り口が明確なぶん、むしろ印象に残りやすい。少なくともきれいごとではない切迫感もある。
経済問題は無論、NHK も扱わなくてはならない大テーマだが、局を挙げてそれに特化した感のあるテレビ東京の最大の強みは、商品名や固有名詞を最も重要なソースとして使うことは当然だが、特定の企業とその具体的戦略にスポットを当てることができるということである。国の経済政策、国民の動向や経済指標でなく、個々の経営をリポートし、なおかつスポンサードの弱さから民放っぽくなく、バラエティとしてでもなく、NHK 張りにシリアスに映るということだ。
最近、印象深かったのは、「生き残りを賭けた・・・新通販戦争」としてネット通販に対抗しようとするテレビ通販、カタログ通販を取り上げたものだ。ジャパネットたかたは、自宅訪問でパソコンやタブレットの使い方を説明するなどで巻き返しを図っているが、さらに東京進出するという。
2013年に最高益を出せなければ社長を辞任するという、ジャパネットたかたの高田明社長の言葉は、ちょっとショックだった。あのウルサイぐらいの高音の絶叫の陰に、そんな決意が隠されてあったとは。宮崎駿親子よろしく二代目を見守る視線も、こんなシリアスな、しかし NHK ではない経済番組でなければ捉えられないだろう。何にでもノウハウはある。それがしばしば一代かぎりとなってしまうのは、それもやはり「思想」の賜物だからだ。プロフェッショナルとは、ビジネスに「思想」があることをいう。切り口が「思想」に届くなら、それもやはり経済専門キー局だという証左になるだろう。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■