出没!アド街ック天国
テレビ東京
土曜 21時~
東京都内か、近辺の都市しか取り上げないというイメージだったので、わりあいに全国で放映されていると知り、意外だった。首都圏在住者にとっては、近所のあそこが出ていた、という番組なのだ。近くの、安いのだけが取り柄の八百屋のオヤジが「地域の人々の健康に貢献したいと考えている」なんて言ってて驚き呆れた。ぼんやり観てたら、5年ばかりご無沙汰していた友人が出てたこともある。まさにローカル性の魅力を体現している。
だから地方の人が観て、おもしろいのかと思う。とはいえ、番組が地方の街を取り上げることもあるっちゃあ、ある。が、それはあくまで観光客目線。東京からそこへ遊びに行った場合に訪れるべきベスト30 であって、近所の八百屋のオヤジのコメントにのけぞるという愉しみはあるまい。ただ、東京もんが来たら、どんなとこを観てまわろうとするのかを知る、ということはあるだろう。
観光立国、といった言葉が聞かれるようになって、外国人客の誘致もさることながら、さて国内でも、ある土地に出かけてみようとする動機については、観たい側と観せようとする側にズレがある、ということをしばしば感じる。いつも同じ料理ばかり出す木造の旧い旅館を「そこしかないから」と人に勧め、地元の人に「ほかにもある」と怒られたとか。もちろん勧めた方は、行くんだったら「そこしか考えられないぐらい、すばらしい」というつもりなのだ。いつも同じ料理とて、旅行者には滅多に口に入らず、めずらしい。それが行ってみたら建て直されてピカピカの、それこそほかのどこにでもあるような旅館になっていたとか。
そうすると地方で観ていても、東京の住宅街の、町内会長をしているクリーニング屋のオヤジ、というのが意外とおもしろいのかもしれない。町内会長の風情も気風も、土地土地で違うのでは。
この番組は「開運! なんでも鑑定団」に次ぐ長寿番組だそうで、テレビ東京の「顔」と言ってもいい(「○○!○○○○」という番組名だな、両方)。その街を行く女の子たちのファッションをただ羅列してゆく「○○コレクション」(あ、パリコレとか、ミラノコレクション、東京コレクションから付けたのか!)、あるいは名物商品の紹介「薬丸印の○○」については、意味わからんと言われることが多いが、テレビ東京という局の性格を考えると理解できる。
テレビ東京はキー局だが、ローカルとしての東京を本拠地とし、そのローカル性とは何事もビジネスとして捉えるということだろう。あるいは東京在住者のほとんどが広義のビジネスのためにいるのだ、というスタンスか。それは大阪の「儲かりまっか?」とは無論、似て非なるものだ。
だから皆さまの NHK がなさっているような、単なるあの街この街紹介と違う目的があるかのごとく、「あなたの街の営業本部長」と愛川欽也は自己紹介するわけだ。もちろん、ここでの「街の営業」は微笑ましいパロディに過ぎない。フジテレビやなんかが展開する「ビジネス」の方がずっとエグくてエゲツない。テレビ東京は、株価ニュースや「ガイアの夜明け」同様、「出没!アド街ック天国」でも東京の地場産業を支えようと努力する姿勢を示している、ということだ。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■