探偵バクモン
NHK総合
水曜 22:55~
なんとなく今まで避けていて、観ようとしなかった。過去の放送タイトルはしかし、なかなかキャッチーである。数字をあまり気にしなくてよいはずの NHK のはずだが、最近はそうでもないのか。あのかつての「あるある」を持ち出してはどうかと思われるが、それと比較してもいいところを突いている。
「あるある」と違うのは、必ずしも視聴者の我が身に関わるノウハウに直結はしない、ただ、知的関心というか好奇心を刺激する仕掛けを用意しているという点である。「普段は入れないところに潜入し、外からはうかがい知れないディープな裏側を探り出」すというコンセプトだ。するとアンチエイジングみたいなテーマも、明日から真似させようというのではなく、君島十和子とか南雲先生とかのディープすぎる人たちを眺めて呆れるというのが正しいのだろう。
知的探訪と言っても、新宿二丁目などというありがちなところではなく、また江戸東京博物館に潜入(っても年間100万人以上、入場してるし)でもなく、同じ館でも国立公文書館の金庫といったところが NHK っぽくていい。「紙のみぞ知るニッポン」という視点もよくて、歴史上の超重要文書をその紙質からも眺めると、テキストの内容以上にリアルな時代感覚が伝わる。
でもまあ、ものすごくディープな雰囲気かと言うと、もちろん NHK スペシャルみたいってことはない。ちょっと前の時間帯の、ためしてガッテンふう。
それで、あの「あるある」を結局寄せ付けなかった「ためしてガッテン」ほど役には立たなくても、そこそこ面白く観られるこの番組を、これまで避けてきた理由は、ようするに爆笑問題である。爆笑問題が悪いというわけでも、ましてや嫌いなわけでもない。番組に合ってない、というのとも少し違う。いまさら合ってないったって、「バクモン」って冠番組だし。
むしろ知的な探検とか教養エンタテインメントとかに、うまく収まってしまっている爆笑問題がイタくて、見ていられない感じがしていたのだ。なんかこう、子供が教育のレールに載せられてるっていうか。やることなすことヘンで、おかしなことばっかり言ってた子供が学校に行くようになったら、笑えなくなったという感じ。
お笑いは知性がなければ続かないのは、わかりきっている。が、知性があるという美称が落とし穴なのも確かだ。わけのわからんことをぐずぐず言う子供そのものの太田に突っ込む田中でなければ、笑えない。笑いどころが特に必要でもない、しかし NHK の冠番組を持つのは芸能人にとって断わることのできない “ 安定 ” だ。
なんで爆笑問題でなくてはならなかったのだろう、というのが正直なところなのだ。番組がよくないのでも、爆笑がとりたてて悪いのでもないのに。もうとっくにエスタブリッシュされちゃって、こんなことを言っても遅いのだろうが、もう少し放っておいてやってほしかった。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■