岡野隆さんの『詩誌時評・句誌』『No.066 月刊俳句界 2016年09月号』をアップしましたぁ。特集『さらば「萬緑」!』を取り上げておられます。『萬緑』は中村草田男(くさたお)主宰の結社誌ですが、七十二年の歴史に幕を下ろすことになりました。草田男は『降る雪や明治は遠くなりにけり』で知られる俳人です。

 

貝寄風(かひよせ)に乗りて帰郷の船迅し

蟾蜍長子家去る由もなし

思ひ出も金魚も水も蒼を帯びぬ

軍隊の近づく音や秋風裡

降る雪や明治は遠くなりにけり

萬緑の中や吾子の歯生え初むる

冬浜を一川の紺裁ち裂ける

夜の蟻迷へるものは弧を描く

焼跡に遺る三和土や手鞠つく

真直ぐ往けと白痴が指しぬ秋の道

咲き切つて薔薇の容(かたち)を超えけるも

中村草田男

 

岡野さんは『杓子定規に言えば、草田男は虚子「ホトトギス」系の有季定型俳人である。しかし引用の二十句を読んだだけでも草田男俳句がバリエーションに富んでいることがわかるだろう。(中略)新興俳句に代表される大正俳壇が、近・現代俳句の全盛期だったと言われる由縁である』と批評しておられます。

 

また結社誌について『「萬緑」に限らないが、結社誌は次第に師の教えの墨守に傾いてゆく傾向が強い。伝統俳句の作家たちばかりではない。無季無韻俳句でも前衛俳句でも、結局は師と仰ぐ作家の作品や評論を絶対とし、その微細な解釈に明け暮れるのが常である』、『俳句を文学と定義するなら結社は理念が失われれば廃刊になってよい。むしろ理念が見失われた時点で結社を廃止するのが文学者の正しい姿勢だろう』とも批評しておられます。

 

文学の世界に限りませんが、なかなか当初の理念通りに組織を動かしてゆくのは難しいです。ただ譲れない一点で筋を通していかなければ、グズグズになってしまうことも多い。また俳句結社も俳人の組織も永続的に続くわけではありません。現在40代くらいの俳人で俳句系の協会に属している人は少数です。20代、30代では結社離れが進んでいます。現実的利便性を含めた組織理念の見直しが急務でしょうね。

 

 

岡野隆 『詩誌時評・句誌』『No.066 月刊俳句界 2016年09月号』 ■

 

 

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