エンジェル・ハート

日本テレビ

日曜 22:30

No.099_TVドラマ批評_01

 

 

 あの『シティ・ハンター』の続編の実写化。ファンの多い漫画なだけに、いかに原作者にそっくりか、というところで評価される一辺倒になるのは、致し方ないだろう。その評判は上々で、数字もよい。つまり主演の上川隆也は、主人公の冴羽獠にそっくりである。と。

 

 上川隆也は個人的に好きな俳優で、ハードボイルドにはぴったりである。何がハードボイルドかと言えば、とにかく無表情だ。その無表情は殺し屋とか探偵のプロフェッショナルなそれと言うよりはしかし、サラリーマンみたいな感じがする。無表情に意味がないのである。

 

 それは非常に得難いものではないか。そういう無意味な無表情というのはほかに橋爪功ぐらいしか思い当たらない。佐藤浩市の無表情は重いし、仲村トオルは苦味ばしっていて、どちらも日常的ではない。とりわけ若い俳優で日常の無為が出せるというのは、いそうでいないものだ。私たちはドラマに囲まれているから無用かといえば、そうでもない。

 

 上川隆也については、繰り返し語られるのが唐沢寿明主演の『白い巨塔』での名場面だ。経営が行き詰り、明日にも事務所を畳もうとしている弁護士役だった。誤診を告発しようとする患者家族の弁護を引き受けることになり、しかし別に正義感からではない。病院から依頼があればやはり、もしかするともっと喜んで引き受けたろう、というのを如実に表していた。

 

 その裁判の証拠調べの際、弁護士は無言で立ち上がり、病院側から提出されたカルテを窓ガラスに貼り付けた。改竄される前の文字が透けて見える。その瞬間の無表情で、上川隆也は俳優としての地位を確立した。と言われているし、まさしくそうだったと思う。

 

 そういうのをハードボイルドというのだとすると、『エンジェル・ハート』というのは文字通りハートウォーミングである。パートナーを事故で亡くした冴羽獠は傷心のまま仕事が受けられず、相変わらずのお調子者トークが浮いていて痛々しい。しかも脳死の彼女の心臓は何者かに強奪されたのだったが、それを移植された美少女の殺し屋が組織から逃げてくる。

 

 ここにある殺し屋、組織といったワードが始末屋シティ・ハンターの前提に呼応するが、その感情のありかは誰にも明白だ。だからこそ大ヒットした漫画であったろう。その主人公をも私たちはよく知っていたし、上川隆也がそっくりに演じていると聞いて戸惑うのもそこにある。

 

 結局のところ私たちの文化は、いわゆるハードボイルドというものは必要としないし、理解もされないのではないかと思う。上川隆也がとりわけ漫画の主人公と似ているのはその身体つきで、決して太ってはいないが、細くもない。定義不能で年齢も不詳、存在することの無意味を黙って受け入れている有様を何と呼んでもいいが、死んだパートナーとの結婚など、はなからあってはならなかったのである。

山際恭子

 

 

 

 

エンジェル・ハート (1) (Bunch comics) エンジェル・ハート 2ndシーズン 1巻

 

 

 

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