NHKスペシャル生命大躍進

NHK総合

2015年6月7午後9時~

テレビバラエティ批評_050_01

 

 

 科学の進歩につき、最新の成果を知る機会は意外とないものだ。日々、忙しく過ごしていると、いつの間にそんなことに、と驚くこともある。その驚きはまた、日常の中に埋没してゆくのだが、それでも我々の何かに影響をおよぼしている。宇宙や生命といった我々のアイデンティティに関わるものはとりわけそうだし、そういうものでなければ取り急ぎ知る必要はないかもしれない。

 

 今回のNスペ「生命大躍進」は三回のシリーズである。三回とは、ちょっと少ないと最初は感じる。しかしそれだけにネタの引っ張りはない、と見るべきだろう。最新の、驚くべき事実を各回伝えられるはずである。リポートすべきことが溜まっているなら、すでに古くなってしまったものもあることになる。

 

 「プラネット・アース」シリーズは傑作だったが、あのように審美的に地球を捉える、というコンセプトとは違う。あくまで最新の「情報」だ。「情報」というコンセプトは、DNAというテーマと相通じる。DNAの解析を通して、我々の日常を構成する重要な機能の根源を探る。

 

 第一回は「目」。我々の「目」のルーツは植物にあるという。目=視線=支配 といった記号的イメージからすると、それは意外で奇妙なことだ。しかし目の原初的な役割とはまず、感光なのだ。光を感じること。光合成をいわばメインの生命活動とする植物が先行して持つ機能だったことは、考えてみれば当然だ。驚くべきは、その植物のDNAを動物のDNAが取り込んだのだという。

 

 第二回は「母性」。神話に彩られた概念を、DNA情報分析によって解体し、根拠付ける。母性の発生は、密着して与える母乳に基づいていて、ならば母乳の起源は何かということになる。それは哺乳類の祖先が柔らかい卵を産んでいた頃、雑菌の感染を防ぐために卵にかけていた汗のようなものだという。それが甘く、栄養豊富な母乳となり、孵化した子供が舐めはじめた。

 

 これら情報に裏付けられたものは同時に、そう言われれば直感的にも腑に落ちる気がする。たとえば原初的な感光の機能しかなかった目は、我々が自身の目として通常イメージするカメラ仕様の目に進化したわけだが、カメラは集約的に光を捉えるもので、感光という機能は感光紙といったものに残されているのではないか。あるいは乳腺というものはもとより汗腺に似ている。

 

 ルーツはともかくその進化については「偶然」と説明され、そこはもう少し詳しく知りたいと思う。偶然の突然変異が適者を生み、生存競争によってそれが主流となる、というシナリオでは人間にたどり着くのにもっとずっと時間がかかるはず、と聞いたことがある。

 

 我々が晒されている情報爆発の状況は、カンブリア紀の生命大躍進に似ている。生命活動は経済活動に似ているし、植物のDNAを動物のそれが取り込むのは組織の吸収合併のようだ。そして乳を舐めはじめた哺乳類が胎盤を持ったのは、熾烈な環境と外敵の脅威からだという。第三回のテーマ「知性」の根源で、我々が今の我々を超えるヒントが示されるかどうか。楽しみである。

田山了一

 

 

 

 

 

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