ラモーナ・ツァラヌさんの 『青い目で観る日本伝統芸能』 『 No.004 笑う門を探しに王子へ ― 第 20 回王子落語会 』 をアップしましたぁ。今回は落語です。ラモーナさん、守備範囲が広いなぁ。不肖・石川、人間が古くなっていますので、初代・林屋三平さんなど、落語家がテレビに出始めた時代を覚えています。三平さんは落語家らしくないとずいぶん叩かれたようですが、彼の臨機応変な反射神経的笑いは、テレビ的には正しかったわけです。いわゆる枕だけの笑いですね。その後、三平さん的な笑いが、落語家ではなく漫才系のコメディアンに受け継がれ、現在のバラエティ全盛時代につながっています。逆に言えば、バラエティ的な笑いと切り離された落語は、以前とは質の違うものになっているわけです。
ラモーナさんは 『喜劇的なる他の伝統芸能に比べ、落語の特徴がどこにあるかを考えると、やはり話芸であることがこの芸の真髄と言える。・・・本当のことを言うのが難しい時、真面目に事実を語るより笑いながら本当のことを言う方が楽なのだ。つまり、一時期的に現実から逃げ場を作ることよりも、落語のユーモアは現実に対する姿勢となるのだ』 と書いておられます。その通りでしょうねぇ。落語は 〝浮世〟 の諸相を面白可笑しく語る話芸です。この浮世って、現世とか現実などとはちょっとニュアンスが違う。英語では 〝floating world〟 と訳されますが、ふわふわと浮き足立っている世の中という意味でもあります。だから浮世絵の華は美しい女性と歌舞伎役者 (芸能人) と相撲取り (スポーツ選手) といふことになる (笑)。で、単に享楽的かといふとそうでもない。浮世絵の軽薄な現世描写もまた、鋭い批判意識がこもった 『現実に対する姿勢』 になり得るわけです。
最近、石川は落語を聞きに行かなくなりましたが、落語って面白いですよ。木馬亭や末広亭など、都内には寄席が数カ所あります。席料は3千円くらいで4時間いられるんですね。そんで頭っから寄席に座っていると、芸といふものがなんとなく実感できます。最初の方は 『金返せっ!』 と叫びたくなります (爆)。でも我慢して座っているとだんだん面白くなる。真打ち登場の頃には客席も満席になって、これはもう文句なく面白い。昼間っから我慢して寄席に座っていると、真打ちは天才ぢゃないかって思えてくるくらいです (笑)。落語を題材にした小説だと、辻原登さんの 『遊動亭円木』 や 『円朝芝居噺 夫婦幽霊』 があります。〝語り〟 といふものがどういふものなのか理解できる傑作であります。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』 『 No.004 笑う門を探しに王子へ ― 第 20 回王子落語会 』 ■