遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第31回)をアップしましたぁ。主人公三四郎とブリッコ美禰子ちゃんの対立篇です。ぶりっ子といってもわざとらしさはないですね。彼女は彼女なりに追い詰められている。それは三四郎もいっしょ。煮え切らない青年ですが超えてはならない社会的一線を意識しています。
この三四郎と美禰子ちゃんの淡い恋愛感情に終止符を打ってくれるのが与次郎です。与次郎だけではないですね。三四郎が尊敬する広田先生も物理学者の野々宮も「ん、ま、あの子はやめとめ皆まで言わすな」といった対応です。それでも三四郎君は彼なりに勇気を振り絞って美禰子ちゃんにアタックしようとするわけです。
このあたり、面白いですね。漱石は実人生では長男大事の封建的家長であり、女房子どもに当たり散らす暴君でもありました。じゃ、この家庭人としては出来損ないの作家がいわゆる男根主義的作家だったかというとそうでもない。性的ではなく当時の女性の社会的立ち位置、それに男の足下をすうくような女性の力を敏感に感受していた。『三四郎』を読んだ読者の中で、美禰子ちゃんファン、案外多いんですよねぇ。
■遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第31回)縦書版■
■遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第31回)横書版■
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