木曜 22:00~
フジテレビ系列
天海祐希と菅野美穂のダブル主演である。それだけで超豪華。どちらも人気だけの女優でなく、きちんと見せるドラマの主演が張れる。
それでもドラマの宿命として、決定的な力を持つものはやはり脚本だ。演技力のない、あるいはイメージに合わない俳優がドラマをぶち壊したり、ドラマの面白さを削いだりすることはあっても、俳優の演技がつまらない脚本をカバーすることはない。
天海祐希は特に脚本を選ぶタイプの女優だ。もともとタカラヅカ、すなわち舞台の男役出身で、中でもすっと際立った印象がある。つまり日常的なフツーの女感がないのだ。生活臭もまったくない。そういう女、キャリア女性で、しかもそのビジネスもフツーじゃなく、キャリアも突破ずれてスゴい、というのでないとハマらない。
TVドラマの代表作としては「女王の教室」だろう。あの異様に怖い、身も蓋もないことを言う、とてつもなく熱心な聖なる問題教師は、天海祐希以外には考えられなかった。とはいえ、まず高いレベルの問題意識を抱えた、素晴らしい脚本があってのことだ。(余談だが、その焼き直しであろう「家政婦のミタ」は数字こそすごかったが、脚本の出来はひどくて見ていられない。)
「離婚弁護士」もよかったが、平均以上であった脚本のレベルとあいまって、古い映画を思わせるような重厚でクラシックな画面に、彼女の姿がよく馴染んでいたと思う。
天海祐希が、非日常的なそのたたずまいを受け入れるだけの脚本や雰囲気のある画面を必要とするのに対し、菅野美穂は違うタイプの女優さんだ。日常的な感覚を切実感をもって演じられる。さらには非日常的な状況に日常的な感覚を持ち込める。そしていずれの女優も、役柄によってまったく別人のようになる、ということはない。一般に女優は皆、そうだけど。
「結婚しない」は、未婚率高まる現代の状況をバックグラウンドとして、結婚しないことを選択した天海祐希演じる春子と、結婚したいけれどできない菅野美穂演じる千春がダブル・ヒロインとなっている。
結婚しないことを選択したというのは、実際にこのまましないかどうかはともかく、意識としてはすでに完結してしまっているので、視聴者にアピールする真性のヒロインは、結婚したいけどできない千春の方ということになる。実際、天海祐希の方は主演とはいえ、その本領を発揮する役柄とは言えない。
当たるTVドラマには 2 通りあって、異常な状況の緊張感がアピールするものと、大方の共感を得る日常的なものだ。「結婚しない」は後者であり、だから菅野美穂の役割が大きいのだが、このドラマのセリフの数々、もうひとつ踏み込めないものか。
日常ドラマの代表格、NHK 朝の連ドラで「カーネーション」が大当たりしたことからも、真の共感は通りいっぺんのものからは得られないとわかる。菅野美穂は本当に上手くて、どんなつまらないセリフも、それなりに切実感をもって聞かせてしまうのだが。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■