第8回金魚屋新人賞受賞の松岡里奈さんの小説『スーパーヒーローズ』第6回をアップしましたぁ。石川は組み版する時に小説を読み直しますが、『スーパーヒーローズ』は力がありますな。迫力がある。この作品に関しては私小説の傑作と言っていいと思います。このタイプの作品はなかなか出ないでしょうね。
イベットという交換留学生の同級生の女の子が出てきます。主人公のフミはこの子を憎悪しながら愛します。でもほとんど交流はありません。通常の意味で親しくおしゃべりして仲良くなったりしないんですね。じゃあイベットとは何か、あるいは誰か? イデアですね。明らかにそうです。言葉の古い意味でアイドルと言ってもいい。近づきがたい完璧な偶像です。
『スーパーヒーローズ』という小説にはイベット的なイデア=アイドルが何人か登場します。その天上と地上とのダイナミックな往還が『スーパーヒーローズ』という小説の構造です。主人公のフミは地上にいて天上のイデアを仰ぎ見ている。しかしそんなものは最初から存在しない。イベットは実際は普通の女の子でイデア=アイドルには値しない。
にも関わらずイデア=アイドルがこの小説の構造軸になっているのは、主人公がイデア=アイドルに近づこうとする軌跡自体が、イデア=アイドルを生むからです。本当に聖なる存在は主人公のフミであり、彼女は当然、死の近くにいる。『スーパーヒーローズ』は恐ろしく俗な小説であり、恐ろしく観念的な小説でもあります。
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第06回)縦書版 ■
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第06回)横書版 ■
■ 第10回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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