金魚屋から『夏目漱石論―現代文学の創出(日本近代文学の言語像Ⅱ)』を好評発売中の、鶴山裕司さんの『美術展時評』『No.110【夏休み篇】富山県立山博物館』をアップしましたぁ。鶴山さんが今年の夏休みに帰省なさった際に訪れた富山県立山博物館の美術評です。美術館の企画展はコロナの影響で大幅に会期が延びたり中止になったりしていますので、今回は企画展ではなく立山博物館そのものの紹介兼美術評です。
日本各地に山岳信仰はあったわけですが、北陸富山(越中)の立山信仰もその一つです。鶴山さんが書いておられますが、立山信仰は日本古来の山中異界思想と源信から始まる地獄概念、それに浄土真宗の悪人正機説が入り交じって成立していった面があるようです。その遺物(宗教美術品)に立山曼荼羅があります。曼荼羅といっても密教のように中心に大日如来を配したものではなく、現世から地獄巡りをして浄土に至るという構成です。実質的に地獄巡り図ですが、こういった構成の曼荼羅は日本でもとても珍しいものです。
コンテンツを読めばわかるように、鶴山さんは『言葉と骨董』や『美術展時評』は楽しんで書くというスタンスをハッキリ決めたようです。知識がなければ書けないことも含まれていますが全体として軽い(笑)。ただ文学批評になるとぜんぜん違う書き方をなさるわけで書き分けができています。
当たり前ですが小難しいことばかり考えている作家はいませんし、軽い読み物を書いている作家だって場合によってはうんうん唸って考えます。文章は技術99パーセントでできていますが、作家の全体像を表現するために技術が必要なのです。作家にとって自在に書けるということはとても重要です。軽くて重いのが人間存在というものであり、その両者を自在に書けるのが物書きの理想です。書くことにストレスを感じなくても済むようにもなります。
■ 鶴山裕司『美術展時評』『No.110【夏休み篇】富山県立山博物館』 ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 第9回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第9回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 金魚屋の本 ■