金魚屋から『佐藤くん、大好き』を好評発売中の原里実さんの連作短編小説『いつかの一日』です。別の物語が背景で動いている作品ですが、キッチリと思春期の男の子と女の子の、恋愛とも言えない恋愛感情が描かれています。原さんはこういったタイプの作品を書くのがうまいですね。
作家は作品を書く前に、多かれ少なかれ力んでしまう生き物です。小説だと突拍子もない物語、できるだけドラマチックな展開を設定しようとしたりするわけです。だけどそれがうまくいくとは限らない。むしろたいていの場合、うまくいかないでしょうね。
読者から支持され、あるいは後世になって傑作と呼ばれたりする作品を、作家が意図して書いた場合はまれです。たいていは傑作を書こうという気負いはない。何作も書いていくうちに、たまたまいい作品が生まれただけのことです。またいい作品が一作出来たからといって、作家の創作活動が止まるわけではありません。
まず書けること、書き続けられることが作家である第一要件です。これは簡単なようで難しい。そう簡単には身につかないからです。最初のうち、作家は自己を社会で顕示したい、有名になりたいなどなどで文学を始めることもあるわけですが、長く続けると変わってきます。文学でしか、文字でしか自己を表現できず、社会との関係性を結べなくなる。文学作品を書くことが〝私と社会の関係〟そのものになってゆくわけです。そうなるとその人は誰がなんと言おうと作家ですね。特に現代は、そういった性根が据わった作家が必要だと思います。
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