金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の、小原眞紀子さんの連載小説『No.004 本格的な女たち』をアップしましたぁ。主人公の瑠璃が、同窓会で再会した高梨という男にまとわりつかれます。瑠璃は『どんな口実でもいいのだ。自分への憎しみに理由などないのだ。悪意はその分、底なしに思えた』と考えますが、その通りですねぇ。現実にありそうな設定です。
嫉妬心は誰にでもあるものだと思います。人間には自我意識があるのだから当然です。自我意識は強くあらねばならないと思っている現代人ならなおさらのことです。現代人は常に比較されて生きているのです。学校でも会社でも文学の世界でも他者との比較は付いて回ります。一人勝ちなどあり得ない。常に自分より優秀な人はいます。もちろん自分より劣った人もいる。そして優秀な人にも、劣っていると軽んじている人に対しても、人間の怒りに似た感情が向かうことはあります。まずその仕組みを自分で腑に落ちるまで考えなければ、自我意識の肥大化による嫉妬心は消えないでしょうね。
ただ自己に向けて発せられる他者のいわれなき敵意は、その底まで探らないと理解できないことが多い。他者の中に巣くっている嫉妬や悪意は、その人の心の闇に直結している。それ自体ミステリーの要素になります。『なんとそういう理由で!』ということが多いのです。たいていの場合、その感情のはけ口が向かう他者は誰でもいい。でも自分より優れている、いい生活をしている、安定している人に向かいます。瑠璃さん、どうやってこの危機を掻い潜るのでしょうか。楽しみです。
■ 小原眞紀子 連載小説『No.004 本格的な女たち』縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連載小説『No.004 本格的な女たち』横書版 ■
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