ラモーナ・ツァラヌさんの連載小説『No.002 時空堂』(中編)をアップしましたぁ。ラモーナさんの本格的日本語小説処女作です。上中下編の3回に分けてアップします。『時空堂』というタイトルから想像できるように、この小説では時空が歪みます。つまりそこからが小説の始まりであり、正念場です。入り口をどこに設定するかですね。
クララさんは淀みなく話した。時空堂の開店理由より、本の由来を話す方が楽しそうだった。「どうぞ続けてください」と言うと、僕はアームチェアに腰掛けた。
「戦前はどの国も大変だったけど、特にドイツに占領された国は厳しかったの。この本の持ち主はワルシャワに住んでいた父の親友で、古本屋を開いてたの。一九三三年にベルリンで焚書があって、ナチスが禁書指定した本を持っているだけで逮捕され、罰せられるようになったのね。父は親友を訪ねて、禁書でも貴重な本なら、僕が国外に持ち出して預かってあげると言ったの。父も本好きだったんです」
本棚に囲まれたお店で二人は話したわ。ちょうどこのお店みたいに、天井まで本棚がしつらえられていて、高い所に登るための梯子があって、ちょうどわたしたちみたいにテーブルを挟んで、向かい合って。
(ラモーナ・ツァラヌ『時空堂』)
『ちょうどわたしたちみたいにテーブルを挟んで、向かい合って』の箇所から、スッと時空の扉が開きます。見事な転調ですね。創作はMORE FUNなのであります。
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『No.002 時空堂』(中編)縦書版 ■
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『No.002 時空堂』(中編)横書版 ■
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