連載翻訳小説 e.e.カミングズ著/星隆弘訳『伽藍』(第22回)をアップしましたぁ。『第四章 新入り』の続きです。獄中の生活がリアルに描かれています。第一次世界大戦中の戦犯収容所の様子ですが、テクノロジーが進歩した現代でも牢獄は似たようなものでしょうね。特に戦争が起こって一時的に収容する人が増えれば悲惨なことになると思います。
わたしたちが生きる21世紀初頭という時代、ちょいとヤバイですね。世界各地でナショナリズムが高まっていて、過去の清算を含めた国同士の諍いも絶えません。だから『伽藍』のような作品を翻訳する意義もあるわけです。でもペシミスティックな雰囲気を煽るために戦中を扱った作品が書かれたわけではないです。
人間という生き物は、難しい時代になると簡単な解決を求めがちです。現代でも極論を唱える人が増えていますね。国交断絶とか開戦とか、物騒なことを言い出す人もいます。だけどそう簡単に戦争や紛争は起こりません。誰にとっても難しく、モヤモヤとした状態が長く続くことで、物事はベターな方向に行ったりバッドな状態に陥ったりする。どちらにせよ時間がかかります。
『伽藍』で描かれているのは戦時下の日常です。極めて曖昧で不愉快な状態ですね。血湧き肉躍るというわけにはいきませんが、簡単な解決を提示しているような物語より、こういった小説の方がずっと戦争のリアルに近いのです。
■ e.e.カミングズ著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第四章 新入り』(第22回)縦書版 ■
■ e.e.カミングズ著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第四章 新入り』(第22回)横書版 ■
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