NETFLIXオリジナルドラマ
【出演】
ジャニーズWEST、川島海荷、鹿賀丈史ほか
【原作】
島本和彦
新しいタイプのメディアによる、わりと新しい感じのドラマである。ほんとうのところドラマとしては観ていられないのだけれど、こういうのもあっていいのかな、と思う。NHKの受信料について最高裁判決が出たりしたけれど、テレビというハードウェアの定義が曖昧になっていって、たとえばこれからメーカーがテレビ単独機を製造停止した場合、どうなるのだろうと考える。
時代の流れからいって、ハードウェアで何かを定義するのは無理が出ようから、もう一回裁判が起こされなくてはならなくなるかもしれない。NHKに公共性があるのは確かだとしたら、そこに限定して課税したらどうか。課税額はわずかでも、国民全員から取りこぼしなく徴収すれば、今の受信料と同じくらい集まるだろう。契約という形態に固執する理由がわからないが、公共放送以外のエンタメ部分のみ契約して観たらいい。
すなわち公平性は大事だし、一方で今のNHKのエンタメを楽しめる層と楽しめない層が同額を負担するのは不公平である。その楽しめない層がいるというのは、このコンテンツを観ていて思う。こういうコンテンツを喜んで観るような人々もいるのだ、とか、彼らにNHKのエンタメ番組はつまらなく思えるだろう、ということでは必ずしもない。むしろエンタメ作品は大差ないな、と思う。
ようするに面白いもつまらないも、紙一重ということだ。万人に有用な、もしくは潜在的に有用な公共放送はあり得るが、万人にとって面白いコンテンツはない。で、面白くないと感じたところで、腹を立てるほどのことはない。もっとも金返せという憤りはあり得るから、本来はお金をとっているNHKの方が民放よりも視聴率にナーバスでなくてはいけないはずだが。
それはNHKでなく、我々視聴者の鈍さがもたらしたものかもしれない。スポンサーの手前、敏感にならざるを得ない民放に対してはうるさく、体質的に鈍感なNHKに対しては諦めている。民放はタダで、NHKにはお金を払っているのに。だとしたらネットで「全世界同時配信」されるという新しいタイプのメディアのエンタメ・コンテンツに対しては、どういう態度をとるべきか。
ネットのコンテンツはたいてい「全世界同時配信」と言えば言えるので、それ自体、ちょっと可笑しい。内容もしんからオカしくて、必ずしも面白いという意味ではないが、しかしいい意味でヘンである。雑で投げやりな作りに感じられるが、丁寧に作られたツマらないエンタメよりずっとマシな気がする。そもそもマジなエンタメって、語義矛盾じゃん、と思われるのだ。
見どころはと言えば、実写ドラマなのだが、マンガで書かれた音「ピューッ」とか「がががガーッ」とかがそのまま書き込まれている。つまり出演者たちは、メアリー・ポピンズみたいにマンガの中に飛び込んでいったともいえる。ジャニーズの男の子たちが出ていて、なにやら駆けずり回っているだけだが、その中にマドンナとしてウニちゃんが出演。相変わらずマンガ的にカワイイ。
ところで、なんで『炎の転校生』なのか。今の若い子たちかおそらく知らない、島本和彦のかつての青春ギャグマンガで、もしかしてひそかに再ブームなのか。番組には島本和彦を顔を出し、版権を渡したらどうのこうの(こんなクダらない番組にリメークされたとか?)言って、またすぐ北海道に帰って行く。「ピューッ」とかいうカタカナを足の後ろに引きずりながら。
田山了一
■ 島本和彦さんの本 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■