星隆弘さんの連載演劇批評『現代演劇の見(せ)かた』『No.020 新宿梁山泊 第58回公演 『マクベス』』をアップしましたぁ。11月末に行われた新宿梁山泊 第58回公演 満天星シェイクスピアシリーズVol.3『マクベス』の劇評です。梁山泊主宰の金守珍(キムスジン)さんのインタビューも文学金魚で掲載していますので、是非そちらの方も合わせてお読みください。
新宿梁山泊版『マクベス』は、原作中では数度しか登場しない魔女たちが、ほとんど出ずっぱりで舞台に暗躍する。開幕すると、三人は黒を基調とし娼婦を思わせる艶かしい出で立ちで、歌い踊り、舞台上に赤い蜘蛛の巣の罠を張る。マクベスが蜘蛛の巣に引っかかると、もう彼女らの掌中である。予言を与え、その成り行きを楽しむ様が、観客席と向かい合う奥舞台に透けて見える。彼女らは演出家であると同時に観客でもある。ダンカン王暗殺の夜にマクベスが幻視する短剣も、魔女たちが舞台袖から差し出す。母子殺しの悲劇には思わず声をあげて咽び、勇を鼓してマクベス打倒の決意を固めた場面には拍手喝采を送る。観客席で静かに見つめている我々以上に観客らしいこの魔女たちは、心ゆくまで劇的なるものを味わいたいという無邪気な欲望の権化のようにも見える。
(星隆弘)
観劇された方はお分かりでしょうが、新宿梁山泊さんの劇場・満天星はそれほど広い舞台ではありません。そこであの『マクベス』やるだぁ?と思った方も多いと思います。『マクベス』はお金をかければ壮大な演劇として上演することもできます。エキストラ的役者を大勢使って最後の戦闘シーンを演じる方法もあります。しかし梁山泊の金さんの演出はさすがです。
梁山泊版マクベスでは魔女たちが影の主役です。だから魔女たちに操られた人間たちという構図ができ、それに振り回される矮小な人間を描くことができる。つまり出演者の数を抑えてでも『マクベス』の世界を的確に表現できるわけです。演出の勝利ですな。梁山泊版『マクベス』はミニマル『マクベス』であり、かつその本質を掴んだ『マクベス』であります。
■ 星隆弘 連載演劇批評『現代演劇の見(せ)かた』『No.020 新宿梁山泊 第58回公演 『マクベス』』 ■
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