大篠夏彦さんの文芸誌時評『No.026 文學界 2015年06月号』をアップしましたぁ。「第120回文學界新人賞受賞作、加藤秀行さんの『サバイブ』を取り上げておられます。加藤さんは千葉県出身で、一九八三年生まれ、東京大学経済学部卒業後、会社員をしながら現在ベトナムで暮らしておられるようです。『サバイブ』は外資系企業に勤める亮介とケーヤの家に居候する、フリーターのダイスケが主人公です。
大篠さんは、『「サバイブ」は、高度資本主義のマネーゲーム社会を舞台としながら、そこから昔ながらの文脈での、意義ある生活に戻ることを紙一重でこらえている。グローバリズムに浸食され切っていない新興国に行っても(中略)何も変わりはしない。決定的に変容した新たな社会を〝見てしまった者〟は、もう後戻りできないのである。またその新しさは、過去の叡智を頼りにできない未知のものだ。社会の変容によって犠牲者になるのは途上国の人間だけではない。先進国でも同じだ。従来の私は「割れたガラスのようなもの」であり、「かけらを見つけ、元通りにすることが出来るのは、結局のところ自分しかいない」のである。そこに「チームメイト」はいない』と批評しておられます。
また『加藤氏ははっきりと現代精神を捉えた有望な新人である。ただそれゆえに、彼には小説作家とは別の道が開けている、あるいは見えているはずである。加藤氏は選ばれるべくして選ばれた優れた新人である。しかし純文学界の魅力が褪せきっていることに気づくのに、そう時間はかからないはずだ。彼がしばらくであろうと純文学界に留まり、サバイブの道筋を探求してくれることを切に望む』とも大篠さんは批評しておられます。ほぼ絶賛ですね。石川も読みましたがいい作品だと思います。そろそろ20世紀的な停滞を破って、加藤さんのような21世紀の新たな才能が芽吹く時期なのかもしれません。
■ 大篠夏彦 文芸誌時評 『No.026 文學界 2015年06月号』 ■
文学金魚では来る六月上旬に第01回『文学金魚大学校セミナー』を開催します。また『~Web文芸誌のパイオニア~文学金魚大学校セミナー開催・新人賞支援プロジェクト』(クラウドファウンディング)を開始しました。皆様の積極的なご参加を心よりお待ちしております。