鶴山裕司さんの『Ongaku & Bungaku by Kingyo』『No.027 カーペンターズと赤いスポーツカー』をアップしましたぁ。カーペンターズの大ヒット曲『イエスタディ・ワンス・モア』が収録されたアルバムは『ナウ・アンド・ゼン』というタイトルで、フェラーリに乗ったカーペンター兄妹の写真がジャケットでした。1973年のリリースです。
鶴山さんは、『しばらく手に取って眺めただけなのに、そのアルバムジャケットは長く目に残った。(中略)赤いスポーツカーと白い家だけが印象に残った。どちらも僕の町にはなかったのである。僕の家の近くには、平屋建ての広大な社宅が広がっていた。社宅は一軒家で、雪国ということもあってぜんぶ三角屋根だった。屋根が平らな家は珍しかった。外壁が白い家もなかった。社宅には医者が住んでいて、古ぼけたフォルクスワーゲンのビートルに乗っていた。真っ黒な排気ガスを吐き出しながらノロノロと走っていた。まだ道路は舗装されていなくて、いつも砂埃を巻き上げていた。それが僕が見たことのある唯一の外車だった』と書いておられます。
鶴山さんはまた、『『イエスタディ・ワンス・モア』の歌詞をちゃんと読んで理解したのは、大学生くらいの時だった。漠然とラブソングだと思っていたのだがそうではなかった。正確に言うと〝あなたとわたしのラブソング〟ではない。ラジオから流れてくるラブソングに恋していた頃の私を、いとおしく眺めているような歌詞だ。純粋に歌に恋していたティーンエイジャーの私を懐かしんでいる。だからこの曲にはラジオと歌と私しか登場しない。その恋情は、どんな表現者も心の奥底に抱いている純な心だろう』と書いておられます。良質のエッセイになっています。じっくりお楽しみください。
■ 鶴山裕司 『Ongaku & Bungaku by Kingyo』『No.027 カーペンターズと赤いスポーツカー』 ■
■ 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)は3月31日〆切です ■
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