金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.039 ファーブルの昆虫記 ファーブル著 大岡信訳』をアップしましたぁ。金井さんは、「虫である。・・・女の子であったりすれば、自分からはまず手に取らない本だろう。しかし、ではなぜこれほどまでに有名なのか。だいたいにおいて、本というものは女の子の方がよく読む。その支持をいっさい得られないというハンディキャップを負いながら、なおかつ子供の必読書として伝えられている。ファーブルの生きた時代は、江戸時代末期から明治時代なのである。そのことにあらためて驚くとともに、名著とは何かという問いの答えも覗く」と書いておられます。その通りだなぁ。
『ファーブル昆虫記』って、オリジナルはもんのすごく大部の著作なんですよ。岩波文庫で完訳が出ていますが、500ページ近い厚さで10巻あります。その中の面白い部分が抄訳とか少年・少女向けの本として編集されて出版されているのであります。またファーブル先生はヨーロッパよりも日本などの東洋での方が有名なやうです。汎神論世界の方がファーブルを受け入れやすい土壌があるのかしらん。日本人は虫の鳴き声を愛でる習慣を持っていますが、これは全世界共通ではなひです。アフリカの一部地域は虫にほぼ興味がなく、「飛ぶ虫」、「鳴く虫」といった区分けですませているやうです。虫ひとつ取っても、文化圏によってその対応は様々なのでありまふ。
ただファーブルが昆虫の観察によって、人類優位主義とでもいえるような傲慢を、期せずして相対化した面はあるでせうね。金井さんは、「虫たちの姿や行為がどれだけ異形に見えようとも、それは私たちの営みと等価である。そのように思わせる力が、ファーブルの筆にはある。・・・虫たちの社会と虫たちの営みとを完全に等価に見得る視点、というものは、私たちに怖れを抱かせる。それは嫌悪ではなく、畏怖の念だ。どこかしら神に接近していると感じさせるものを、私たちは決して反古にすることはできないし、名著というものは煎じ詰めればそういうものだろう」と批評しておられます。『ファーブル昆虫記』、名著であります。
■ 金井純 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.039 ファーブルの昆虫記 ファーブル著 大岡信訳』 ■