小松剛生さんの第1回 辻原登奨励小説賞受賞作『切れ端に書く』(第04回)をアップしましたぁ。今回はニッケル君が登場します。友だちのハコは公務員を目指し、ニッケル君は歯を愛するあまり歯科矯正を始め、ついにはそれまで行っていた大学をやめて歯科大学に通い始めた青年です。どちらもやりたいことや目標があるといふことです。しかし僕はどうなんでしょうね。
「お祝いなんてものはな、人と人の間にある不正を矯正するために行われるものなんだ。俺にはニッケルがある、そんなもの必要ないんだよ」
でも気持ちだけは受け取っておくぜ、ありがとよ、
がちゃん。
しばらくの沈黙の後、彼は言った。
「どうだ、うちに来ないか」
がちゃん。
相変わらず小松さんは擬音の使い方がうまいなぁ。「がちゃん」という言葉で人間と人間の関係が、突然途切れ、また繋がることが端的に表現されています。そして人間関係がいったん途切れたあたりから、僕の〝モノカキ〟としての意欲や姿勢が生み出されているようです。新しいタイプの私小説でしょうね。じっくりお楽しみください。
■ 小松剛生 連載小説『切れ端に書く』(第04回) pdf 版 ■
■ 小松剛生 連載小説『切れ端に書く』(第04回) テキスト版 ■