露津まりいさんの新連載サスペンス小説『香獣』(第07回)をアップしましたぁ。面白い展開になって来ました。芙蓉子の事務所に情報を売り込んだ週刊誌のトップ屋が、なんらかの目的を秘めて芙蓉子に接近してきます。『この蓬寺もまた、トップ屋を廃業しようとしている。が、この男は「トップ」と違い、単にトップ屋が務まらないだけ、とは思えなかった。自分と同じ匂い、とは言い過ぎか。だが、おそらくは芙蓉子同様、他人が築いた利権の山、既得権の森を切り崩し、使われる側から抜けたいのだ。今に始まったことではあるまい、さまざまな機会に獣道を探ってきたに違いなかった』とあります。また新しい魅力的な登場人物といふか伏線が増えましたね。
露津さん、伏線張りの名手だと思います。それが緊張感が持続するサスペンス小説の土台となっているわけですが、露津さんの場合、謎解きなどに落としどころがないのが特徴でしょうね。不肖・石川、実を言うと、露津さんタイプの作品がこれからの時代のいわゆる純文学になってゆくのではないかと思ったりしているのです。西村賢太さんの私小説は面白いですが、彼のように知識としても作家の強い意志としても私小説というジャンルを選んだ方の作品でなければ、もう私小説で傑作は生まれて来ないように思います。大勢はいっけん大衆小説的だけど、実は純文学という流れにシフトしてゆくでせうね。
ちょっと前に露津さんと次作についてお話したのですが、どーもヴィジュアリスティックな作品を構想しておられるらしひ。あ、ヴィジュアリスティックな作品は、文学金魚でご自分の作品などが、写真といっしょに掲載されているのを見て思いつかれたそうです。『絵がないというか、絵が浮かばない小説は、つまんないよね』とおっしゃっていました。露津さんの作品の質は今後も変わり続けそうですぅ。
■ 露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第07回) pdf 版 ■
■ 露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第07回) テキスト版 ■