山本俊則さんの美術展時評『No.032 アメリカン・ポップ・アート-ジョン&キミコ・パワーズ・コレクション展』をアップしましたぁ。もう展覧会は終了してしまいましたが、人気のポップ・アート展の時評です。サブタイトルにジョン&キミコ・パワーズ・コレクション展とあるやうに、この展覧会はパワーズ夫妻の個人コレクションを展示したものでした。すんごい量と質であります。美術の目利きで、それプラスある程度自由に使えるお金があると、素晴らしいコレクションができあがるんだなぁとつくづく思います。
ほんで山本さんの美術展時評は文学金魚コンテンツの中ではけっこう人気です。学生さんたちがレポートを書くのに参考にしておられるのかしら(爆)。どんどん参照していただきたいですが、丸ごとコピペはあまりよろしくありませんぞ。剽窃うんぬんを問題視してるわけでは必ずしもないですが、やっぱ自分で考えないとあきまへん。
あ、そういえば以前ある詩人さんと剽窃についてお話したことがあります。詩の世界では同人誌が盛んですから、少部数の同人誌であまり人目に触れなければ、ちょいと剽窃といふか、出典を明記しないで内容を引っ張っちゃってもだいぢゃうぶだろうと考える作家がちらほらいるそうです。簡単に言えば、同人誌からアイディアを盗んで商業誌に書いちゃうわけです。でもま、素人さんはともかく、プロを自任する作家は絶対にやっちゃいけないことでありまふ。
ネット上の文章の剽窃的引用はときどき問題になりますが、基本、世界中から読めるネット上での公開では、剽窃は簡単なやうで本質的に難しくなるでしょうね。不肖・石川はベンチャーの文学金魚の編集人などをやっておりますから、同人誌であらうと商業誌であらうと関係なしに、優れた作家をいっつも探しております。
ほんで山本さんは、『多くの人は思春期になって初めて現代アートの世界を知る。最初はその奇抜さに驚き、やがて〝それを知っていること自体〟がなにか大人になったような証明に思えてくる。しかしそのような知恵熱の時期を過ぎれば、やがて現代アート本来の姿が徐々に見えてくる』と書いておられます。これには爆笑してしまひました。確かにそうですね。不肖・石川も数々の知恵熱を出してきたやうな気がします。
ただま、石川くらいの世代には、通過儀礼としてあった知恵熱的文化受容が、最近ではすっかり影を潜めてしまったやうです。大学生の時にド・サドや澁澤龍彦を読んでドキドキするといった体験は、一昔前はあまりにもありきたりな経験でしたが、今ではそういう人は、同世代の中で特殊な人に分類されるやうです。
こりがいいことなのか悪いことなのか、にわかには判断がつきません。ただ平均寿命の伸びと同時に、人間の成熟といふか、文化の受容なども徐々に遅くなっているやうな気配がありまふ。でも一昔前には通過儀礼として受容されていた文化が、若い世代には、かつてより衝撃をもって受け入れられているのならよいことです。問題は常に、いかにそこから優れた作品を生み出すかでありまふ。
■ 山本俊則 美術展時評『No.032 アメリカン・ポップ・アート-ジョン&キミコ・パワーズ・コレクション展』 ■