金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.023 長くつしたのピッピ アストリッド・リンドグレーン著』をアップしましたぁ。金井さんはズバリ『長くつしたのピッピ』の本質を衝いておられます。
『『ピッピ』が傑作であるのは、作者リンドグレーンが、必ずしもピッピを主人公にした物語を書こうとしたわけではないことにある。彼女はピッピ的なるものが保守的日常社会において、いかに人間の夢や希望に結びついてるのかを徹底して描こうとしている。ピッピは恐ろしくおしゃべりなのだが、その言葉から彼女の内面をうかがい知ることはできない。・・・ピッピは楽しいがでたらめな言葉を撒き散らしながら、保守的社会を揺さぶるような行動を次々に起こしていく。しかしそれは子どもたちの、あるいはかつて子どもだった大人たちの、夢と希望そのものなのだ』と。勉強になるなぁ。
また金井さんは、『『ピッピ』は児童小説はもちろん、ヨーロッパ文化についても深く考えさせられる傑作である。『ピッピ』の舞台はヨーロッパのブルジョワ社会である。それは同時代の世界と比べれば、とてつもなく物質的に豊かな社会だった。しかしそこには息苦しい閉塞感が漂う。それを打破してくれそうなのは外の力である。船乗りの父を持つピッピの姿は、大航海時代がヨーロッパにもたらした文化的・物質的衝撃に重なる。十九世紀から二十世紀初頭のヨーロッパで次々に児童小説の傑作が生まれた背景には、当時の豊かな社会と、海外・・・からもたらされる異文化が融合した結果だと言っていい』と批評されています。
金井さんはさらに、『ヨーロッパの児童小説では、なぜか圧倒的にイギリス作品がビジュアル化しやすい。アリス、ピーターパン、メアリー・ポピンズ、ハリー・ポッターなどがすぐ思い浮かぶ。しかし星の王子様(フランス)は、サン=テグジュペリが描いた絵以外のヴィジュアル化をはねつけ続けている。このジンクスは『ピッピ』にも当てはまりそうだ』とも書いておられますが、これも卓見でしょうね。
不肖・石川、優れた批評精神を持った著者が読解すると、古典的作品からでもこのくらい新しく鮮やかな魅力を引き出せるんだなぁと実感しております。面白いコンテンツになっています。じっくりお楽しみください。
■ 金井純 BOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.023 長くつしたのピッピ アストリッド・リンドグレーン著』 ■