日本が誇る世界的特殊作家、三浦俊彦さんの連載小説『偏態パズル』(第43回)をアップしましたぁ。今回は穴埋めテスト方式の『MS哲学基礎論』です。不肖・石川、『黄金愛とは、入れれば愛が成立するノーマルセックスよりも、数段困難で高尚な関係なのである。愛の修行なのである。・・・スカトロジーは、正攻法の愛の描写では限りのある心身両性両極のMS哲学を、最も尖鋭な形で露出させてくれる。それゆえにこそ、この文化の価値を隠蔽するのみならず矮小化するような凡百の卑猥な映像類に、私は深い危惧の念を覚えずにはいられないのである』という箇所に、不覚にもちょっと感動しました。こりはほとんど選挙演説のやうな絶叫調だなぁ。三浦センセの主張、センセに清き一票を投票するかどうかは別として、確かに有権者の心に届きましたぞぃ(爆)。
ただ小説としては、この文章は『金妙塾最古参にして最大の論客とかいう肛門科医・吉丸八彦四十九歳』が、ネオクソゲリラ活動の一つとして、電車内で朗読した文章の一つといふことになっています。それを聞いた印南哲治さんは、『その認識レベルに到達するまでにこの俺がどれだけの血の滲むような努力、込み上げるような修業と修行と宿業を積み重ねなければならなかったか、わかってやがるのか』と怒り心頭に達するのであります。そもそも吉丸医師が読んだ文章は、印南さんが書いたものなのですから当然ですね。
このあたりの構造もまた、『偏態パズル』が特殊小説中の特殊小説である理由の一つでしょうね。『偏態パズル』は登場人物の内面を掘り下げて行くタイプの作品ではありません。基本的に客観描写的な学術的態度で書かれています。しかしそのフラットな描写が、今回のやうに登場人物同士の衝突や齟齬を生み出してゆく。描写記述の連続は作品を単調にしてしまふ危険があるわけですが、三浦センセはあくまでその方法を守りながら、作品にダイナミズムを与える工夫をこらしておられます。三浦センセのおろち愛は、やっぱ学術集団の金妙塾よりも上位審級にあるんだなぁ。がんばれ印南さんなのでしたぁ(爆)。
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第43回) pdf版 ■
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第43回) テキスト版 ■