金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.013 はてしない物語』をアップしましたぁ。ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデさんのベストセラー・ファンタジー小説です。エンデさんはナチス時代も経験されていますが、反ナチスのレジスタンス組織に参加して伝令として活動しました。また日本に縁の深い作家さんで、奥様は『はてしない物語』を翻訳された佐藤真理子さんです。1995年に65歳でお亡くなりになっています。
金井さんは、『ここで語られているのは孔子的〝正名論〟である。すべての物事にはその本質(正しい名)があるという思想だ。エンデが東洋への強い関心を抱く作家であることはよく知られている。エンデは従来のキリスト教的思想の枠組みの中に、東洋思想を取り入れたのである』と書いておられます。ヨーロッパは柔軟なコンバイン文化ですね。日本は欧米文化を積極的に取り入れましたが、キリスト教的中心概念を消化・援用することはほとんどできていない。精神的に完全に飲み込まれてしまうか、表層を真似するか、どちらかですね。
昨日、トーベ・ヤンソンさんが日本のムーミン・アニメに苦言を呈したと書きましたが、エンデさんの『はてしない物語』の映画化『ネバーエンディング・ストーリー』でも同様のことが起きました。一番問題になったのは、映画では主人公のバスチアンが、ラストでいじめっ子に仕返しをするシーンが加えられたことです。これがどれほど原作から逸脱した解釈であるかは、金井さんのコンテンツを読めばおわかりになると思います。
『はてしない物語』が繰り広げられるファンタージェン国の女王、幼ごころの君は、善悪や美醜、あるいは愚賢に優劣をつけない存在です。それらは全て世界を構成するための重要な要素だからです。原作を理解していれば、バスチアンがいじめっ子に仕返しすることはあり得ない。映画は映画で魅力ある作品に仕上がっていると思いますが、『はてしない物語』の場合、本と映画は別モノとして楽しんだ方が良さそうです。
■ 金井純 BOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.013 はてしない物語』 ■