金井純さんの『親御さんのための読書講座』『No.028 はとの神様』をアップしましたぁ。『はとの神様』は関口尚さんの作品です。鳩レースを中心にした少年少女の成長物語(ビルドゥングスロマン)です。石川の知り合いに鳩レース好きの人はいませんが、子供の頃、近所にマジックのために鳩を飼っているおじさんがいました。鳩はポポちゃんといふ名前で、手品のたびにポポちゃんが現れるのでした。子供らは鳩が出てびっくらするよりも、「あ、ポポちゃん!」と興奮しておりました(爆)。おとなしい白い鳩だったなぁ。
ほんで金井さんは『あえて注文を出すなら、なぜ鳩なのか、というところが、今ひとつ響いてこない、というところだ。・・・おそらくキーワードは「千キロの距離をひたむきに、命がけで」というところだろう。そこに感動して書かれたということは理解できるが、読者にも同様の感動を与えるには、その「ひたむきに、命がけで」が鳩だけでなく、登場人物においても同じ強度で行われる必要があると思う』と評しておられます。なぜ鳩なんでせうね。不肖・石川も幼少のみぎり、おじさんのふくらんだポッケを見ながら考えておりましたぁ。
小説を含め、日本文学で『神様』といふ概念をいかに有効に活用できるのかといふ問題は明治維新後から始まっています。神様は東洋的な神様、つまり汎神論的神と、欧米中東を中心とする一神教的絶対神に大別できます。小説は作家が登場人物を操って物語を進める芸術ですから、維新以降の小説形式は基本的には欧米的一神教構造を持っています。しかしそれだけでは弱いですね。さらなる上位審級観念が必要とされます。東洋、西洋を問わず神性は不可知です。この不可知は欠落の回りに言語を配置していくことでしか表現できません。神をタイトルに掲げるなら欠落が主題になるわけで、その強度が問われると思います。
■ 金井純 『親御さんのための読書講座』『No.028 はとの神様』 ■