谷輪洋一さんの文芸誌時評『No.003 早稲田文学 第6号 2013年09月』をアップしましたぁ。75歳9ヶ月の史上最年長記録で第148回芥川賞を受賞された黒田夏子さんのインタビューなどが掲載されています。ほんで谷輪さんも文学賞について考察されています。
『新人賞をもらうことで、以前なら「権威の入口」に立ったと見なされて、5年、10年ではないにせよ、2、3年分の生存チケットはその当然の副賞として付いてきたものだったが、今はない』と書いておられます。もちろん新人賞からスター作家になる方もいらっしゃるわけですが、全体的に賞によって保証される生存チケットの有効期限がどんどん短くなっているのは確かだと思います。文芸誌の新人賞を受賞した新人作家に与えられる芥川賞でもそれは変わりません。芥川賞受賞作家が十年後に第一線で活躍しているパーセンテージは、10パーセントくらいぢゃないでしょうか。
はっきり言えば、優れた純文学作家が年に二回も、それも最大4人も小説界に登場するわけがない。しかし現在純文学作家として売れている作家でも芥川賞を受賞していなかったりする。これが賞といふものの難しいところです。この難しさは現在、加速度的に増大しています。どの編集部も新人賞を与える基準に悩んでおられると思います。何が良い文学なのか、どれが売れる作品なのかが編集のプロですら見極めがたくなっています。
文学金魚は純文学メディアのベンチャーですから、新人賞について紙媒体のメディアとは少し違った考え方をしています。たくさんの方に受賞させるといふ意味ではないですが、できるだけ多くの優れた作家を発掘したい。また文学界を変えていける作家を育てたい。そのためには一定レベルの作品を継続的に書ける力が必要です。文学金魚では賞をゴールではなく、単なるスタート地点と位置付けています。一作ごとに可能な限り良い作品を書き、それを淡々と本にまとめる。本気で作家や詩人になりたいと思うなら、これ以外にやることなどないはずです。
■ 谷輪洋一 文芸誌時評 『No.003 早稲田文学 第6号 2013年09月』 ■