軍師官兵衛
NHK総合
日曜日 20:00~
まだ始まったばかりである。長丁場で、今後はどうなるかわからない。視聴率低迷が伝えられるが、と言っても 16% 。この数字で低迷と言われるのは大河ならではで、まあ、かかっているコストも違うのだが。
低迷の理由はいろいろと言われていて、やれナレーションがよくないとか、画面が暗いとか汚いとか、果てはよく知らない主人公で、しかも男だとか。よく知らなくても、女ならいいのか。歴史の別の側面、ということで。なおナレーションは藤村志保の骨折で、交代になるそうだ。
まず初回を観た感じだと、画面が暗いというよりはむしろ平板な印象を受けた。様々な登場人物が、大河だからそれも結構、豪華なキャストで出てくるのだが、なぜか豪華さを感じさせない。なんかいろんな人がぞろぞろ出てきているだけで、キャスティングのセンスがいまいち。と言うと、ろくな俳優が出ていないように聞こえるが、そうではなくて、そのキャスティングの「狙い」がよく見えないのだ。あくまでも今のところは、だが。
ようするに中心が見えないので、成人した主人公が主人公として登場してくると、すべて解消するのかもしれない。もっとも作品の中心を担っているのは、本当は主演俳優ではなくて脚本家なのだから、最初から伝わってきてもらいたいが。そのドラマで何を伝えたいか、が要するに「狙い」そのもので、その狙いに沿ったキャスティングだな、と感じられることがすなわちキャスティングのセンスというものだろう。
それでドラマで伝えたいテーマとか狙いとかは、そのドラマのそもそもの結構とぴったりでないと、また視聴者が首を捻ることになる。「いのち」とか「愛」とか耳あたりはいい言葉だが、それが耳あたりよく聞こえるのは現代だからで、なんで時代ドラマでそれを伝えようとするのか、やっぱり腑に落ちない。
ここしばらくの大河の傑作だったと思うのは内野聖陽が主演だった『風林火山』で、しっかりした原作のリメイクである方が、ただ目新しいことを狙ったものよりも退屈しなくて、録画してまで観た。内野聖陽はもちろん美男子だが、「醜い」とされている主人公の面構えとして印象的で、俳優としての評価も格段に上がった。登場人物それぞれに託された属性が、その時代性を体現するテーマの表現にきちんと寄与していた。その上での素晴らしいキャスティングだったと思う。
『軍師官兵衛』の主演はしかし岡田准一で、これも当代一の若手俳優の一人である。期待したいが、劇団出身というわけではない岡田の芝居の上手さとは、テレビ的な細かい表情のリアリティにあり、それ自体もきわめて現代性の高い表現だ。ちょっとした家族とのやりとりとか、若い悲しみとかコメディとか、そんな繊細なものを表現する脚本の、それも佳作であれば誰もが舌を巻くような演技を見せる。が、時代ものとなると、どうだろうか。
しかし繰り返すが、まだ始まったばかりである。今後の展開を、ぜひこの欄で再レビューし、評価を改めることができれば嬉しい。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■