金井純さんのBOOKレビュー 『絵のある本のはなし』 『 No.005 『年とったばあやのお話かご』 エリナー・ファージョン著 』 をアップしましたぁ。ファージョンシリーズ第三段で、彼女の著作については今回でひとまず最後です。『年とったばあやのお話かご』 は、ヨーロッパの王様はもちろん、エジプトから中東、中国にまで至る王族に仕えたという物語の語り部そのもののようなお婆さんが、子供たちに毎晩一つずつお話をしていくという体裁をとっています。
現代的に言えばオムニバスなのですが、金井さんが 『子供たちの靴下の穴をかがりながら、ばあやはお話をする。穴にぴったり長すぎず、短かすぎない物語は、語られる呼吸が一針ずつの動きそのものであるかのようだ』 と書いておられるように、音楽的なリズムで語られています。そのため各物語を切り離せない、有機的な構造を持った見事な一冊の本に仕上がっています。金井さんは 『年とったばあやのお話かご』 の完成度は 『出世作で代表作でもある 『リンゴ畑のマーティン・ピピン』 をも凌ぐ』 と書いておられますが、不肖・石川も同意です。この作品、まぢ傑作だと思います。
ファージョンは奇をてらった作家ではありません。むしろ当時ですら人々がよく知っている民話や童話を作品化しています。しかしファージョンの瑞々しさ、豊かさは別格です。たとえば民俗学の先駆者であるグリム兄弟とファージョンを読み比べれば、その語感の良さ、イメージの豊富さに驚かれることと思います。感受性の鋭い子供に与えるなら、絶対にファージョンだろうと石川は思います。金井さんが 『ファージョンはその素質として、詩人に近い物語作家だ。・・・いつまでも心に残り、忘れられないものは存外、永遠の一瞬と呼ぶべき断片であることが多い』 と書いておられる通りです。
■ 金井純 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』 『 No.005 『年とったばあやのお話かご』 エリナー・ファージョン著 』 ■