ラモーナ・ツァラヌさんの 『青い目で観る日本伝統芸能』 『 No.003 禅鳳の演出による 〈碇潜〉 の魅力』 をアップしましたぁ。観世銕之亟 (かんぜてつのじょう) さん主宰の銕仙会 (てっせんかい) 11 月定期公演から、お能 『碇潜』 (いかりずき) を取り上げておられます。今回の 『碇潜』 は、室町時代の能楽師・金春禅鳳 (こんぱるぜんぽう) の演出に基づいています。能の小書き (能楽師によって異なる演出指示) 研究の専門家・小田幸子さんが読み解いた禅鳳手稿に従って、観世能楽師の方々が上演されたようです。新聞に載るような話題性はないかもしれませんが、お能の世界にとっては画期的舞台だったと思います。
不肖・石川、お能については不案内なのですが、ラモーナさんのコンテンツを読むと、僕らがイメージする静謐で幽玄なお能を少しだけ逸脱した作品だったようです。大きな作り物の船や碇が登場し、前半から戦いのシーンがあるなど、ちょっと歌舞伎を思わせるような構成です。禅鳳は室町後期の猿楽師で、世阿弥より約百年ほど後の人ですが、この時代のお能は生き物として変化し続けていたことをうかがわせます。ラモーナさんは、もし世阿弥が禅鳳演出の 『碇潜』 を見たら、『おそらく劇的過剰だという風に評価されてしまうのが想像できる』 と書いておられますが、そうでしょうね。お能は舞台芸術ですから、残された文字情報を読み解き上演された舞台を見て、初めて様々な事柄が理解できるのだと思います。
日本の伝統芸能・芸術は、大多数の日本人にとってすら、パッと見て、読んで直観的に理解できるものではありません。ある種エキゾチックな異文化の舞台・芸術を見る (読む) ようにそれに興味を持ち、知識を深めるにつて、その真価に気づいていくのが普通だと思います。またその過程で浮かんでは消えて行く様々な読解が、日本古典芸能 (芸術) に新たな魅力を与え、ひいては現代芸術の糧になっていくのではないかと思います。ラモーナさんがお能を見る目はとても新鮮な文章になっています。これからもラモーナさんのコンテンツに期待ですっ!。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』 『 No.003 禅鳳の演出による 〈碇潜〉 の魅力』 ■