新チューボーですよ
TBS
土曜23:30~
堺正章の長寿料理番組である。店のメニューにあるようなポピュラーな料理を堺正章とアシスタント、ゲストの三者で拵える。中心になるのは堺正章で、ゲストが試食の上、出来栄えに星を付ける。
いわゆる家庭料理番組ではなく、レストランメニューの再現を目指すというところだ。番組の冒頭では、西麻布の巨匠、代官山の巨匠、などとそのメニューを出すレストラン三軒の料理人と、それぞれのレシピが紹介される。店ごとに結構、違うものである。
長年、この番組を続けている堺正章が腕を上げた面はあるには違いないのだが、それをあまり感じさせないのが番組の一貫したコンセプトであろう。堺正章がいつも大わらわでフライパンを持ち上げようとしているところや、調味料を足しながら叫んでいるイメージがある。
実際、大わらわにならざるを得ないような難しい料理もあり、一方ではごく簡単そうに思われるメニューもある。簡単なものの方が当然、評価は高くなるが、ゲストの好みや気まぐれで恣意的な星の付け方をされることもある。それはもちろん、ご愛敬である。
雰囲気としては、ワガママで思い込みの激しいお父さんが、今日はアレを作るぞ! と周りを巻き込んで料理会を開いているという感じである。各週のメニューに関連性もバックグラウンドも見当たらないところが、お父さんが昨日、西麻布で食べてきたやつ、というふうでもある。
実はあまりぴんとこないのだが、この番組のアシスタントというのが注目されるらしい。長寿で名の通った番組であり、堺正章の相手ということで業界的にはオイシイ仕事かもしれないが、観ている側としては、たいして印象に残らない。いわゆる女子アナ、モデル出身のハンパな(失礼)タレントさんというのを番組の華と見るか、刺身のツマと見るかは視聴者の性別などにもよるだろうが、華であれツマであれ、アシスタントによって番組の出来が左右されることがあるだろうか。
それでも堺正章が、アシスタントに感謝してハンドバッグを贈ったといった噂を聞くと、現場はいろいろあるのだろうと思ってしまう。ただ、感心するのはバッグをもらったアシスタントではなく、贈ったという堺正章の方にだが。
世の中のものは、中心的な存在と、行き過ぎてゆくもので出来ている。始まったときから今日に至るまで、「チューボーですよ」の内容も雰囲気も、驚くほど変わっていない。堺正章がいる、というそのことだけで、それを観ていたい視聴者が観ている。堺正章は老け込むことなく、昔と変わらないし、料理の腕を上げた様子もあまりない。毎週のゲストはいろいろなのだが、堺正章と掛け合い、ときに寸劇をし、出来上がった料理を食べて星を付ける。めまぐるしいテレビの世界で、その変化のなさは、なかなかいい光景だ。
変わりゆくもの、過ぎ去った歳月を感じさせるものは確かに、“ 卒業 ” していったアシスタントがゲストで里帰りしてきたときぐらいかもしれない。誰がドジを踏むことが多かったのか、ハンドバッグをもらったのか、「星いくついただけますでしょうか」と英語で訊くのか、こちらはまるで区別がつかないのだが。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■