長岡しおりさんの文芸誌時評 『No.006 群像 2013年06月号』 をアップしましたぁ。『私のベスト3』 という企画コーナーの、岡崎玲子さんの 『海外で受ける治療』 を取り上げておられます。岡崎さん、イランでレーシック手術を受け、ソウルで骨気という治療で顔の形を整え、上海で中医学の治療を受けて謎の発疹が治ったそうです。治療方法についてはもちろん、なぜ海外でそんなに色々治療を受けることになったのか、想像してみるだけでも楽しいですよね (笑)。
日本には文學界、新潮、群像、すばる、文藝といった文芸誌 (純文学小説中心の雑誌) があります。文芸5誌とも呼ばれます。最近では文學界が長年掲載してきた小説同人誌評を引き継いだ三田文學を入れて、文芸6誌と呼んでもいいかもしれません。これらの雑誌がいわゆる純文学系の 〝文壇〟 を形作っています。中心は言うまでもなく芥川賞を主宰する文藝春秋社の文學界です。芥川賞の一般的知名度は圧倒的であり、ニュース番組で必ず受賞が報道されるのは芥川賞・直木賞だけです。
この 20 世紀の約 100 年をかけて営々と築き上げられた文壇システムは、そう簡単なことでは変わらないと思います。しかしまあ、せっかく 21 世紀になって情報化の時代が到来したのですから、もうちょっとオルタナティブなメディアがあってもいいのではないかと (笑)。不肖・石川が読んでいても、個々の作家さんはさまざまな試みを行って文学の新たな方向性を探っておられます。しかし苦しげだなぁと思うことも多い。作品の中身が器に沿って変形しているのではないかと感じることもあります。
詩集よりマシですが、純文学小説本も売れません。雑誌売上も概して低調です。雑誌には人件費はもちろん、印刷代など相当額のコストがかかっている。紙媒体の場合、コストとページ数は正比例するので、必然的に作品数や枚数が絞り込まれます。では絞り込んで投資に見合う売上を得られているのかと言えば、そう簡単ではない。絞りに絞り込んだ原稿が雑誌に掲載されるわけですが、その後単行本にすらならない作品が非常に多い。ビジネス的に言えば雑誌単体でコストを回収するか、芥川賞などで話題になった単行本で赤字を埋めるしか方法がないわけです。このシステムを抜本的に変えるのはなかなか厳しいものがあります。
もそっとビジネスの基本となる作品発表システムを変えてみては、といふのがウエッブ文芸誌である文学金魚のスタンスです。もちろん編集システムには紙媒体と同じ困難がつきまといます。どんな原稿でも掲載するのなら、メディアとしての特性や一貫性が保てません。しかしメディアも作家も、従来の 〝器〟 とは明らかに違う方法を試してみる価値はあると思うわけです。純文学が売れない時代だからこそ、作家の確信と自由な器、それに新たな編集力が必要だと思います。
■ 長岡しおり 文芸誌時評 『No.006 群像 2013年06月号』 ■