山本俊則さんの 『連載美術展時評 No.030 禅画に込めたメッセージ 白隠展』 をアップしましたぁ。江戸中期に活躍した白隠 (はくいん) 禅師の展覧会を取り上げておられます。宗教者なのですが、白隠さんは書家・画家としても知られます。一般的な知名度はあまり高くないですが、素晴らしい書や絵を描き残しておられます。『これからもっと評価が高くなるんじゃないかなぁ』 と山本さんはおっしゃっていました。
不肖・石川もそうですが、金魚屋の著者はいわゆるノンポリ、ノン宗教の方ばかりです。でも哲学としての宗教に強い関心を寄せておられる方もいらっしゃいます。山本さんは禅と密教系哲学に強いですし、鶴山さんはイスラーム系哲学に詳しいです。そういった著者間の情報交換の成果が、徐々に金魚屋のコンテンツにも現れてきているやうですね。
日本やヨーロッパを含め、19 世紀までの世界思想はそれぞれの宗教的思惟を深めることで発展してきました。その原理を考えることは、各文化圏の基層的思想を把握するのにとても有効です。ただ 20 世紀以降の世界の共通思考方法は、ヨーロッパ的な論理的指向がベースになりました。つまり 1 9世紀までの東洋思想は、20 世紀的な思考言語に翻訳・置換されなければ、世界思想としての要件を満たせなくなったわけです。
侘び・寂びもそうですが、悟りや解脱などについても、東洋人の書くものは茫漠としたものになりがちです。しかしそれではいつまでたっても東洋思想は世界思想の一角を占められないわけです。山本さんの禅思想の説明は明快です。もちろん全て説明し尽くせるわけではないですが、できる限り論理的思考で東洋思想を説明する努力は必須だと思います。
■ 山本俊則 『連載美術展時評 No.030 禅画に込めたメッセージ 白隠展』 ■